皆さんは、「大人の発達障害」という言葉を聞いたことありますか?
テレビやインターネット、SNSでもよくこの言葉を見かけることがあります。
私も最近本屋に行って、「大人の発達障害」というタイトルのついた本を多く見かけました。
そもそも「大人の発達障害」とは一体どんなものなのでしょうか。
そして、大人になって発達障害を診断された場合どうすればいいのでしょうか?
今回は、この「大人の発達障害」について詳しくご紹介します。
○発達障害とは?
まず、発達障害とは幼い頃から現れる発達のバラツキによって、脳内の情報処理やコントロールに偏りが出て、ふだんの生活に難しさを感じている状態を指します。
こうした得意なことと苦手なこととの差は誰にでもあるものですが、発達障害のある人はバラツキが大きいため、ある特定の分野には優れた才能を発揮できますが、ある分野では非常に苦手意識が強いといった特徴があります。
決して「やる気不足・努力不足」だから発達障害は発症するものではありません。
ご自身の頑張りや自己対処でなんとか周囲と同じようにできますが、その分周囲よりも苦労しています。しかし、周囲は「障害がある」「できないことがある」ことを知らず、「問題なくできている」「みんなと同じ」だと評価しています。
そのため、一生懸命頑張って周囲に追いつこう、合わせようとすればするほど、周囲の「できている」という期待を裏切ることが大きな不安になります。
障害がある方にとって、周囲と同じように生活していくことも負担になることですが、同時に周囲と一緒の行動ができないことも負荷が高いことでもあります。
発達障害には、大きく「ASD(自閉スペクトラム症)」「ADHD(注意欠如・多動症)」「LD(学習障害)」の3つがありますが、人によっては、複数の特性を併せ持つこともあります。

発達障害は見た目では分からないため、周囲はつい「本人の努力が足りない」などと思ってしまいがちです。
しかし、努力をしてもなかなか改善が難しいということがあります。
だからこそ、発達障害が「障害」として位置づけられたともいえます。
○なぜ大人になるまで見つからないのか
発達障害は、「大人になってなる」障害ではありません。
多くの場合は、子どもの頃からその特性は現れていましたが、なぜ大人になってようやく発達障害があると分かるのでしょうか。
様々な理由がありますが、理由の一つとして、「子ども」と「大人」の違いがあります。皆さんも学校での生活をイメージしてみてください。
・時間割に沿って先生が授業を行い、それをノートにまとめる。
・与えられた宿題をやっていれば、人付き合いが苦手でもあまり問題にはならない。
・勉強ができれば、多少場違いな行動があっても、先生や親がフォローしてくれる。
このように家族や先生、仲のいい友達といった比較的小さなエリアの中での人間関係では、発達障害の特性も一つの「個性」や「性格」ということで認めてもらえているかもしれません。
それでは次に、新社会人として新しい職場で仕事を行うとなった時をイメージしてみてください。
初めての職場への期待や未知なる世界へのワクワク感よりも初対面の人が待ち構える社会への緊張や慣れない業務への不安が強いのではないかと思います。
本来その緊張や不安は、時間の経過とともに徐々に軽減していくものですが、学校生活より多くの人との関わり合いがあり、同僚・上司・取引先など複雑な人間関係を作っていく中で、相手の表情や気持ち、場の雰囲気からすべきことを察することや周囲の行動に合わせていくことなど学校生活のころよりも高度なコミュニケーションスキルが求められていき、なかなか緊張と不安は軽減しません。
また、受動的に物事に取り組むだけではなく、主体的に行動していく姿も社会では求められます。
例えば、会議の場で意見を発表したり、先を見据えて必要な行動を考えたりすることも社会人として求められることが多くなります。
そのような自分自身を取り囲む環境の変化の中でずっと感じ続ける緊張や不安がストレスに変わっていき、自分の内にあった発達障害の特性が突如として浮かび上がり、「働きづらさ」を抱えることが考えられます。
これが「大人の発達障害」と言われるものです。
○五月病と発達障害
話は変わりますが、皆さんは「五月病」という言葉を聞いたことがあるかと思います。
どういったものかご存じでしょうか。
五月病とは正式な病名ではなく、俗称です。
就職など環境の変化に適応できず、ゴールデンウィーク明け頃に無気力な状態になることから名づけられました。
五月病は、新生活に慣れずストレスを溜めた結果、発症してしまうのです。
症状の多くが「新生活がスタートして1ヶ月程度過ぎた5月頃に出る」「新入生や新入社員に起こりやすい」点から一般的に五月病と呼ばれています。
この「五月病」の原因の一つとして、「自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、アスペルガー症候群などの発達障害」が原因で生じる場合があります。
先ほどお伝えしたように、新しい職場環境に馴染めず、周囲とも上手くコミュニケーションが取れなくなると、徐々にストレスを感じるようになり、仕事への意欲が減退していきやすくなります。
ウェルビーでも入社まもない時期は、不慣れな環境で何かと不安を抱きやすいため、特に力を入れて、就職された方のサポートを行っています。
○発達障害の療法
発達障害の治療方法は薬物療法のほかにも、ウェルビーのプログラムでも実施している障害について理解を深めることを目的とした心理教育や、コミュニケーション能力を向上させるためのSST(ソーシャル・スキル・トレーニング)などの生活療法もあります。
ただ、現在のところ「根本的」に完治させることはできません。
そのため、生活していく中で支障となる場面を見つけ、何が原因で支障になっているのか、自己対処できる方法はないかなどを探っていくこととなります。
ウェルビーでも、発達障害がある方々の就職支援を行ってまいりました。
その支援の中でも重要になってくるのが「障害特性に対する自己理解」です。
就職するにあたり、 自ら職場に自分自身の障害特性に対して理解と配慮を求めていくことになります。
その際に、自分自身が「自分のこと」についてはっきりとわかっていないと伝えたくても伝えられません。
ぜひ、自分自身と向き合って「自分のこと」をもっと知ってみることからスタートしてみましょう。
○相談できる環境を作ろう
大人の発達障害というものは、まだまだ認知度は低いです。
ですが、本人の工夫や周囲の配慮、医療や福祉の支援によってできることは沢山あり、可能性は開かれています。
例えば、公的な相談窓口として「発達障害者支援センター」や「障害者就業・生活支援センター」があります。発達障害者支援センターは、発達障害のある人への支援を専門機関です。
発達障害のある人とその家族が豊かな地域生活を送れるように、保健、医療、福祉などの分野の関係機関と連携し、地域における支援ネットワークを形成しながら、発達障害のある人の日常生活や仕事、人間関係など、幅広い相談に応じています。
障害者就業・生活支援センターは、障害のある人の生活と仕事を、両面から相談ができる機関です。
健康管理や金銭管理のほか、就職に関することも相談できます。
また、発達障害の症状についての治療方法や検査・診断については「精神科」「心療内科」のある医療機関で実施しています。
なお、発達障害の診断を行っているかどうかについては、各医療機関にお問い合わせください。
最後に、私たちウェルビーでも、発達障害をはじめ、様々な障害がある方の就労支援を行ってきた経験を踏まえ、就職に関することや就労移行支援サービスに関することについてはお気軽にご相談を承っています。
一人で不安や辛さを抱え込まずに、一緒に明るい未来を描いていけるとより楽しく暮らしていけると思いますので、最初は勇気がいることですが、お問い合わせしてみてはいかがでしょうか。
(参考サイト)
●政府広報オンライン
大人になって気づく発達障害ひとりで悩まず専門相談窓口に相談を!