障害の種類と疾患

就職活動ガイド

障害の種類

障害者対策の基本的理念を示す法律「障害者基本法」では、障害者の定義を「身体障害、知的障害、または精神障害があるため長期にわたり日常生活、または社会生活に相当な制限を受ける者」としています。これに対し、発達障害者の総合的な支援を目標とした「発達障害者支援法」が2005年に施行されました。長年にわたり障害者福祉制度の谷間に置かれ、その気付きや対応が遅れがちであった自閉症・アスペルガー症候群、LD(学習障害)、ADHD(注意欠陥多動性障害)などを「発達障害」と定義して、それぞれの障害特性やライフステージに応じた支援を国・自治体・国民の責務として定めた法律です。さらに、2013年4月の障害者総合支援法において、障害者の対象に難病等が追加され、障害福祉サービスの対象となりました。

精神障害

精神疾患の総称をいい、様々な原因により意識、知能、記憶、感情、思考、行動などの精神機能に障害を生じ、精神が正常に働かず、行動の異常が出現します。原因は主に、内因性(遺伝的性質や体質)、外因性(脳の損傷やホルモンバランスの崩れ)、心因性(精神的ストレスや環境要因)に分けられます。 主な精神障害として次のようなものが挙げられます。

<うつ病>

脳の中の神経の伝達がうまくいかなくなるなどの機能の異常によって発症します。抑うつ気分、意欲・興味・精神活動の低下、焦燥、不眠、持続する悲しみ・不安などが続き、通常の社会生活が困難となります。このような状態が続くだけでなく、頭痛やめまい、便秘や疲労感など身体的な自覚症状を伴うこともあります。

<統合失調症>

脳内の統合機能が失調し、感情や思考、行動をまとめられなくなる状態をいいます。症状としては、幻覚や妄想、興奮などの激しい症状(陽性症状)のほか、意欲の低下や感情の起伏の喪失、引きこもりなど(陰性症状)、多様な症状が出るのが特徴です。感覚や思考、行動の歪みを自身で自覚することが難しくなる(病識の障害)という要素も併せ持っています。誤解や偏見の観点から、2002年に「精神分裂病」という病名が「統合失調症」に変更されました。

<双極性障害>

気分障害に分類され、以前は「躁うつ病」と呼ばれていました。気分が高まったり落ち込んだり、躁状態とうつ状態を繰り返します。特に、躁状態のときの常軌を逸した行動により社会生活に大きな影響を及ぼすこと、また、うつ病と間違われやすいことが特徴です。なお、双極性障害は、激しい躁状態とうつ状態が繰り返す双極性障害Ⅰ型と、軽い躁状態(軽躁状態)とうつ状態を繰り返す双極性障害Ⅱ型に分類されます。

<薬物依存症>

依存症の一つで、薬物の使用により脳の中枢神経系が覚醒、興奮または抑制され、自己の意思で薬物の使用を制限できなくなる状態をいいます。使用への欲求が抑えられなくなり(精神依存)、連用すると耐性が形成されるため使用量が増加します。摂取をやめると非常に苦しい離脱症状が出現します。情緒面、意欲面、道徳面で大きな変化が生じ、比較的高率で幻視・幻聴・身体幻覚や被害関係妄想、嫉妬妄想などの中毒性精神病を合併します。重度になると自殺や凶悪な犯罪に発展する危険があります。

<てんかん>

脳の神経細胞が突然一時的に異常な電気活動(電気発射)を起こすことにより発作(てんかん発作)が発生する疾患です。症状は、いわゆる「けいれん」と呼ばれる間代発作、手足が突っ張り体を硬くする強直発作、非常に短時間の意識消失が起こる欠神発作、全身や手足が一瞬ピクッとするミオクロニー発作など様々ですが、患者ごとに同じ発作が繰り返し生じるのが特徴です。適切な投薬と治療でほとんどがコントロール可能で、多くの方が普通に社会生活を営んでいます。なお、申請して認められると、精神障害者保健福祉手帳が交付されます。

<高次脳機能障害>

病気(脳血管障害、脳症、脳炎など)や、事故(脳外傷)によって脳が損傷されたために、認知機能に障害が起きた状態をいいます。症状としては、記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などで、失語、失行、失認も含みます。障害の状況により、精神障害者保健福祉手帳、身体手帳、療育手帳が交付されます。 周囲の状況にあった適切な行動が選べず生活に支障をきたしますが、外見上分かりにくく周囲の理解が得られにくいことから「見えない障害」とも呼ばれます。

発達障害

先天性の脳の機能障害が原因で乳幼児期に生じる発達の遅れをいい、知的障害を伴う場合もあります。
発達障害者支援法においては、主に自閉症・アスペルガー症候群、学習障害(LD)、注意欠陥・多動性障害(ADHD)に分類しています。なお、自閉症やアスペルガー症候群は広汎性発達障害に含まれます。
複数の発達障害を伴う場合も多いなど個人差がとても大きく、また、周囲の対応や環境によって生じる後天的な二次障害(引きこもりやうつ状態等)を発症しやすいのも特徴です。
主な発達障害として次のようなものが挙げられます。

<広汎性発達障害(自閉スペクトラム症)>

発達障害の一群で、言葉や認知の面など様々な領域において発達に遅れがみられる障害を指します。自閉症、アスペルガー症候群のほか、レット障害、小児期崩壊性障害、特定不能の広汎性発達障害が含まれます。なお、広汎性発達障害は、「自閉症」、「アスペルガー症候群」、「小児期崩壊性障害」、「特定不能の広汎性発達障害」を統合して「自閉スペクトラム症」に名称変更されました。

<アスペルガー症候群(自閉スペクトラム症)>

広汎性発達障害に分類されます。知的の障害がなく会話の能力はあるものの、社会性やコミュニケーション、想像力に障害があります。特徴としては、場の空気を読めない、曖昧が苦手、強いこだわりがある、などが挙げられます。なお、アスペルガー症候群は元々、知的障害がない自閉症である高機能自閉症と似た症状と言われており、自閉症との明確な境界線引きは難しいとされていましたが、自閉症などとともに「自閉スペクトラム症」に統合されました。

<学習障害(LD)(限局性学習症:SLD)>

LDはLearning Disabilitiesの略で、発達障害の一つです。知的の障害は見られず、“読む”、“書く”などのある特定の能力の一つまたは複数の分野において、理解や能力取得に困難が生じる障害です。LDの原因は脳の障害と言われ、様々な感覚を理解し、イメージとして統合する能力に問題があると言われています。なお、学習障害は、「限局性学習症」に名称が変更されました。

<自閉症(自閉スペクトラム症)>

対人関係構築(社会性)の障害、コミュニケーション(意思伝達)の障害、創造力の障害(パターン化した興味や活動)、の3つの特徴をもつ障害です。なお、自閉症の半数以上は知的障害を伴いますが、残りの約3割は知的障害を伴わない症状で「高機能自閉症」と呼ばれます。自閉症は、発達障害のなかの広汎性発達障害に分類され、症状が軽い人たちまで含めて自閉症スペクトラム障害という呼び方をされる場合もありましたが、アスペルガー症候群などとともに「自閉スペクトラム症」に統合されました。

<注意欠陥多動性障害(ADHD) (注意欠如・多動症)>

不注意(集中力が続かない、忘れっぽい)や、多動性(じっとしていられない)、衝動性(思ったことをすぐ行為に移す、順番を待てない)、の三つの要素が見られます。知的障害はありません。多動や衝動性などの特徴が目立たない不注意優勢型、多動で衝動的な多動・衝動性優勢型、双方が現れる混合型、に分けられます。なお、注意欠陥多動性障害は、「注意欠如・多動症」に名称が変更されました。

知的障害

記憶、知覚、推理、判断などの知的機能の発達に遅れがみられ、社会生活などへの適応が難しい状態をいい、18歳までに生じるものを指します。医学上用いられる「精神遅滞」とほぼ同義で、法令上の用語として「知的障害」を用いる形で使い分けられます。 行政施策上では知能指数(IQ)75(もしくは70)以下を指します。知的障害に認定されると療育手帳が交付され、最重度・重度の場合はA、中度・軽度の場合はBと記載されます。

身体障害

身体障害とは、先天的あるいは後天的な理由で身体機能の一部に障害を生じている状態、あるいはそのような障害自体のことをいいます。身体障害者福祉法では、「視覚障害」、「聴覚・平衡機能障害」、「音声・言語・そしゃく機能障害」、「肢体不自由」、「内臓機能などの疾患による内部障害」の5種類に分類されます。それぞれの障害種類ごとに身体障害の程度を7等級に区分しており、最重度の1級から軽度の6級までが身体障害者手帳の交付対象となります。(7級の障害は二つ以上重複している場合のみ交付対象) 主な身体障害として次のようなものが挙げられます。

<肢体不自由>

四肢(上肢・下肢)、体幹(腹筋、背筋、胸筋、足の筋肉等、内臓を含まない胴体の部分)の機能が先天的または後天的に損なわれ、長期にわたり歩行や筆記などの日常生活動作に困難が伴う状態をいいます。肢体不自由は、身体障害全体の約半分を占めています。

<視覚障害>

視力や視野に障害があり、生活に支障を来している状態をいいます。視覚障害は、視覚(視機能)が弱い「弱視」と、全く無い「全盲」に分けられます。身体障害者福祉法に規定されている視覚障害は、視機能のうちの矯正視力、視野の程度により1級から6級(最重度は1級)に区分されます。

<聴覚障害>

身の回りの音や話し言葉が聞こえにくい、または、ほとんど聞こえない状態をいいます。聴覚障害者のうち、手話など視覚的なコミュニケーション手段を用いる人を「ろう者」、補聴器などを用いて音声によるコミュニケーションが図れる人を「難聴者」、また、後天的に聴力を失った人を「中途失聴者」と表現することもあります。身体障害者福祉法に規定されている聴覚障害は、程度により2、3、4、6級(最重度は2級)に区分されます。

<内部障害>

身体障害者福祉法における障害分類の一つで、疾患などによる内臓の機能の障害により、日常生活が著しく制限を受ける程度をいいます。心臓・腎臓・呼吸器・膀胱(ぼうこう)・直腸・小腸・肝臓の機能障害とHIVによる免疫機能障害の総称をいい、「見えない障害」とも呼ばれます。程度により、1、3、4級の障害等級に区分されます。(HIVによる免疫機能障害は2級もあります)

難病

難病とは、発病の機構が明らかでなく、かつ、治療方法が確立していない希少な疾病であって、当該疾病にかかることにより長期にわたり療養を必要とすることとなるものをいいます。
つまり、(1)希少性 (2)原因不明 (3)効果的な治療法が未確立 (4)生活面への長期にわたる支障、という要素を満たすものを難病といいます。そして、この4つの要素を満たす疾患(難病)のうち、診断基準が一応確立し、かつ難治度、重症度が高く、患者数が比較的少ないため、公費負担により原因の究明や治療法の開発を推進すべき疾患について、医療費の助成制度があります。
2015年から「難病の患者に対する医療等に関する法律」に基づき新たな難病の医療費助成制度が始まり、医療費助成の対象疾患(指定難病)が拡大されています。

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