一般に、ストレスとは不快な刺激によって生じる心身の反応をいいます。医学的には「外圧に対して、身体が懸命に持ちこたえようとする防御反応」とされ、何かの刺激に対し身体や心が「どうにかしなくては!」となっている状態をいいます。
ストレスには精神的ストレスと身体的ストレスがありますが、普段私たちがストレスと言っているものは、精神的ストレスを指します。
なお、不快な刺激のことをストレッサ―といい、これに対する心身の反応をストレス反応といいます。例えば、「暑い」というストレッサ―に対し、「汗をかく」というストレス反応があります。同様に、「まぶしい」には「目を細める」、「悪口」には「腹が立つ」というような関係が挙げられます。
ストレスは生きている限り生じます。したがって私たちに必要なのは、自分のストレスについてよく知り適切な対処法を実践することでストレスと上手につきあっていくことだと言えます。ストレスマネジメントとは、堅苦しく言うと「ストレス反応の軽減を目的とした介入」となりますが、簡単に言うと「ストレスとの上手な付き合い方」ということになると思います。
ストレスとの上手な付き合い方は、ストレスマネジメントにとって重要なポイントですが、そのために必要となるのが「ストレスコーピング」です。コーピングとは、「対処法」、「適切に対処する」という意味です。つまり、「ストレスコーピング」=“ストレスをなくす”、ではなく、ストレス状況やストレス反応に対処する、人間関係を上手に対処する、ということです。これができれば自分のストレスマネジメント力を強めることができます。
ストレッサ―への対処法として、ストレッサ―が起こることを予測し予め対応を決めておくことは、ストレス予防にとって有効な手段になりますが、これもストレスコーピングの一つといえます。
ストレスマネジメントの第一段階として、まず、自分自身で心身の緊張などのストレス反応に気づき、客観的に現在の状態やストレスの原因について考えます。ストレス反応は、心、身体、行動に出ますので、それに気づくことが重要です。
精神面に起こる反応には、急性と慢性があります。急性の精神的反応としては、物事に集中できない、なかなか決断できない、物覚えが悪い、忘れやすい、くよくよと考える、不合理なことを考える、などがあります。慢性の精神的反応としては、心因性逃走、心因性うつ病、不安神経症、統合失調症、アルコール依存症、などがあります。
これらの反応が、血圧上昇や心拍数の増加を促し、結果として循環機能に悪影響を与え、内臓肥満や高血圧など様々な疾患をもたらすことがあります。
精身体面に起こる反応には、急性と慢性があります。急性の身体反応としては、血圧の上昇、心拍の増加、過呼吸、めまい、発汗、しびれ、けいれん、頭痛、胃痛、吐き気、発疹、などがあります。慢性的な身体反応には、喘息、胃潰瘍、円形脱毛症、心因性失声、心因性疼痛、過敏性腸性症候群などがあります。
これらは身体に対して直接的な影響を与えるだけでなく、それらのストレス回避を目的とした喫煙量の増加、多量飲酒、過食・偏食、睡眠不足、運動不足など、生活行動習慣の乱れを引き起こします。
行動面に現れる反応には 、不安からの逃避、引きこもり傾向、飲酒、喫煙、薬物利用、不眠、イライラ、攻撃的、強迫的、食べ物の好みの変化などがあります。
理由が分からずイライラするなど、自分で自分のストレス状態、原因が分からないこともよくあります。そのような場合でも客観的に考えると分かることがあります。ストレスの正体が分かれば対処の仕方も分かるので、いかにストレスを把握するかが重要です。
例えば、次のような内容を箇条書きにしていくと整理・対処方法を作りやすくなります。
・ストレスとはどんなことか?
・ストレスをどんな方法でなくすか?
・今はできないが、もしできたらストレスをなくせると思う方法は?
ストレスを解消するための具体的な行動として、心身の緊張を緩めるリラクゼーション法を身につけることが効果的です。手軽なのは、腹式呼吸を取り入れリラックスする方法です。自宅や職場の席などでも簡単に行えます。人間の呼吸は大きく胸で呼吸する「胸式呼吸」と、お腹(腹筋や横隔膜)で呼吸する「腹式呼吸」の2種類に分かれます。胸式呼吸は多くの空気を身体に循環させる呼吸ではないため心が落ち着きにくいのに対し、腹式呼吸は、多くの空気を身体に循環させるためリラックスしやすいといわれています。
さらに、両腕や上半身、下半身などのパーツごとに力を入れたり、緩めたりすることを繰り返して、身体の緊張を解くストレッチがあります。筋肉をゆっくり伸ばすストレッチは、心身のリラックスに効果があります。長時間同じ姿勢でいると筋肉が収縮した状態が続き、筋肉の血流が滞ります(体のコリ)が、ストレッチはこの体のコリをほぐすことができます。
適度な運動にはストレス解消の効果があると言われます。運動によって交感神経の興奮が抑えられ、副交感神経の働きが優位になり、リラクゼーションできるからです。無理のない目標で楽しく運動をすると効果的です。
自分自身に「勇気の出る言葉」を投げかけると、ストレスは緩和されると言われます。このノウハウは、専門的には「内的会話」とか「自己会話」と呼ばれています。
例えば、ストレスを感じてイライラが言葉や表情、身体にでてまうような場合に、感情をコントロールするための「自分だけの言葉」を用意します。
「落ちつこう」「自分なら必ずできる」などのシンプルな言葉を使って、自分自身に語りかけることでストレスが緩和される場合があります。
睡眠時間を十分にとり、快適な睡眠を得られるようにすることで、ストレスを発散できます。睡眠の問題は医療的に解決できる場合が多いので、専門家に相談するのも一つです。
ストレスについて他人に相談することは非常に有効な手段と言われます。他人に話すことで、自分のストレスを客観的に捉えられるようになります。また、他人の視点から、ストレスの別の側面を発見し、新たな解決法を見つけられる可能性があります。
特に非常に大きなストレスに対しては、周囲の力を借りることが重要です。仕事のストレスなら上司などに、心身に異常を来している可能性がある場合は早めに医師に相談することが必要です。