発達障害が原因で不登校になった子ども(中学生・高校生)との過ごし方|親がすべき対応とは
発達障害のある子どもが不登校になると、不安な気持ちばかりが膨らんでくるかもしれません。また、親としてどのように対応したらよいか、どう一緒に過ごせば子どもの心が休まるのかと、ひとりで悩みを抱えてしまうケースも少なくないはずです。子どもが学校へ行きたがらないときは、子どもの目線に立ち、そばに寄り添ってあげることが大切です。
この記事では、発達障害が原因で不登校になった子ども(中学生・高校生)との過ごし方、将来を考え、親にできることについて紹介します。
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発達障害の子どもへの接し方や話し方、発達障害の特徴による接し方の注意点を具体的に解説いたします。
発達障害が原因で不登校になった子どもとの過ごし方は?
発達障害のある中学生や高校生の子どもが不登校になった場合、どのように対応するのが適切なのかと頭を悩ませてしまうかもしれません。このようなときは、まず十分な休息を取らせてあげましょう。ストレス解消の機会をつくったり話を聞いてあげたりする以外に、生活リズムを崩さないための工夫も必要です。
休息も重要だと教える
子どもが不登校になった直後からしばらくの間は、心身ともに強いストレスを抱えこんでいるケースが少なくありません。そのため、まずはゆっくりと休息を取ることが大切です。学校に行けなくなってしまうと「勉強が遅れるかもしれない」「仲のよいクラスメイトと距離ができてしまうかもしれない」といった不安を感じるかもしれません。
だからといって、無理に学校へ行かせようとすると子どもは困惑し、さらにストレスを溜め込んでしまう可能性があります。このような場面で意識したいのは、学校を休むのは悪いことといったネガティブな感情を子どもが抱かないよう声をかけてあげることです。
十分な休息を取った後は、ストレス解消の機会をつくってあげましょう。体を動かすことが好きな子どもには、自宅でできる軽い運動を促したり、外出できるようなら一緒に子どもの行きたい場所へ出かけたりする等、子どもが「してみたい」と感じることを一緒に探し、無理のない範囲で実行してみましょう。
不安や悩みを聞く機会を設ける
子どもが不登校になったときには、何かしらの理由があります。発達障害のある子どもは、内に秘めた感情や思っていることをうまく表現できない場合が少なくありません。このようなとき、親にできることは、子どもの話をじっくり聞いてあげることです。
ただし、無理に聞き出そうとするのは逆効果です。不安な気持ちを早く解消してあげたいと焦るかもしれませんが、気持ちが不安定なタイミングで無理に問いただしてしまうと、子どもは精神的に追い詰められてしまうため、自身から話し出すまで待ってあげましょう。
子どもが話す気になってくれたら、否定や批判をせずに、最後まで相槌を打ちながら話を聞いてあげることが大切です。会話の中で、部分的に話したくないことが出てくるかもしれません。そのような様子があれば「言いたくないなら言わなくてもいいよ」と伝えてあげると、子どもは安心できます。
生活リズムを崩さないように注意する
自宅で過ごす日が増えると、昼夜逆転の生活になってしまうケースも少なくありません。昼夜逆転の生活に慣れてしまうと、生活リズムを元に戻すのが困難になります。昼夜逆転の生活が続いた場合、家族とのすれ違いが生じたり、不登校が長引いたりするリスクが生じます。
昼夜逆転の生活になる原因の1つに罪悪感が挙げられます。クラスメイトが学校で授業を受けている時間帯に、自分は自宅で休んでいるという現状から目をそらすために、昼間は寝て過ごして夜に活動するといった生活パターンになりがちです。
日頃から肯定的な言葉をかけたり、簡単な家事等を手伝ってもらい感謝の気持ちを伝えたりする等、子どもの自己肯定感が高まる工夫を生活の中に取り入れてみましょう。同時に、早めの睡眠を促すことも大切です。22時にはベッドに入るよう促すことや、午前中に起きるよう声をかけるようにしましょう。
発達障害の子どもが不登校になる主な原因は?
発達障害の種類によって、特性や学校でどのようなことにストレスを感じるかは異なります。
不登校になるきっかけになる原因を障害別にご紹介いたします。
なお、ご紹介する内容はあくまでも一例ですので、すべての子どもが原因としてあてはまるとは限りません。
ASD(自閉スペクトラム症)の場合
ASD(自閉スペクトラム症)の特徴に感覚過敏があります。感覚過敏とは、刺激に対する感覚が敏感になることです。例えば、パソコンモニターの光が眩しく感じすぎて気分が悪くなってしまったり、周りの雑音に耐えられずその場から逃げだしたくなったりする以外に、制服の肌触りが苦手ですぐに脱ぎたくなるケース等が挙げられます。
中学校・高校では集団生活を送るため、感覚過敏のある子どもはクラスメイトたちの話し声が過度に気になったり、視覚的な情報の多さに煩わしさを感じたりします。ストレスになる原因と接し続けた結果、学校生活に疲れてしまったことが原因で、不登校に陥るケースも少なくありません。
また、相手の気持ちになって考えることや共感することが苦手なケースも多く、周りとうまくコミュニケーションを取れないのもASD(自閉スペクトラム症)の特徴です。そのため、うまくクラスに馴染めず、学校やクラスに居づらさを感じてしまうことがあります。
LD(学習障害)/SLD(限局性学習障害)の場合
特定の学習行為を苦手とするのは、LD(学習障害)やSLD(限局性学習障害)の特徴です。例えば、文章の内容を正確に読み取り理解するのが苦手、漢字を正確に書けない、暗算ができない等が挙げられます。
読み・書き・計算が苦手なことから、成績を上げることが難しく「みんなはできるのに自分はできない」といった劣等感を抱くようになり、不登校につながるケースも少なくありません。どんなに真剣に取り組んでも、その努力が報われないことに嫌気がさして「努力してもムダ」だと無気力になってしまい、不登校に陥るケースもあります。
ADHD(注意欠如・多動性障害)の場合
ADHD(注意欠如・多動性障害)の特徴は、多動性・衝動性・過集中等です。じっとしていることが苦手で落ち着いて順番を待てなかったり、感情のコントロールが苦手だったりする以外に、1つのことに集中すると周りが見えなくなる等の特徴があります。
人間関係においてトラブルを起こすケースが多く、少しずつ集団から孤立していき、不登校になるケースもあります。同調圧力の傾向が強い日本では、枠からはみ出てしまう子どもを何らかの方法で攻撃しようとするケースも少なくありません。
発達障害で子どもが不登校になった場合に必要な親の対応は?
まず、子どもがゆっくりと休息できる環境を整えてあげたら、先のことに目を向けてみましょう。子どもの意思を尊重しながら、学校と連携を図ったり、公的機関を利用したりすることで様々なサポートが受けられます。
学校との連携を図る
学校との連携を取ることで、子どもが学校でどのように過ごしているか、今後必要なサポートやどのような支援が受けられるのか把握できます。最低限出席が必要な日数や、休んでいる間の宿題、提出物の有無も一緒にチェックしておくと安心です。
最近では、子どものメンタル面をケアする目的で、スクールカウンセラーの配置が進んでいます。学校にスクールカウンセラーが在籍している場合は、担任も含めて不登校支援や進路指導等について相談してみましょう。
ただし、子どもの意思を尊重することが何よりも重要です。子どもが復学したいと考えていないにもかかわらず、親と学校が主体となってどんどん話を進めてしまえば、子どもの不信感につながりかねません。子どもの意思をくみ取りながら、焦らず行動するようにしましょう。
公的機関に相談する
子どもの不登校に関する悩みは、公的機関に相談できます。児童相談所には、児童福祉司や医師等の専門家が在籍しているので、子どもの発達障害に関する悩みをはじめ、あらゆる相談に乗ってもらえます。全国の都道府県に設置されている児童相談所は「子ども家庭庁」の公式サイトに掲載されているので、自宅から近い施設を調べて問い合わせてみましょう。
また、発達障害の方を支援する目的で設立された専門機関「発達障害者支援センター」でも相談を受け付けてくれます。全国に設置されている発達障害者支援センターは公式サイトで支援センターの一覧がご確認いただけます。その他にも、不登校に関する相談は、各市区町村に設置された「教育センター」でも対応してくれます。
出典:発達障害者支援センター・一覧 | 国立障害者リハビリテーションセンター
不登校だけに限らず、日常生活を送るうえでの悩みがあれば、公的機関を訪ねてみましょう。
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- 全国の支援機関一覧
適切に公共の相談窓口や支援機関を利用する・頼ることで、悩みや困りごとが解決する一歩になるかもしれません。ひとりで考え込まず、誰かに相談してみませんか?
発達障害で不登校になった後の選択肢は?
学校を休んでいる子どもと接する中で、今後どうしていきたいのかといった意思を聞き、尊重したうえでサポートしてあげるのはとても大切なことです。
再度学校に通い始める
これまで通っていた学校に再び通うことを目指してほしい場合、まず子どもの意思を確認しましょう。いつまでも学校へ行かないことを責めたり、無理やり登校させたりする行動は望ましくありません。子どもが学校へ行く意欲を見せた場合でも「無理しなくていいよ」「行けなくても問題ないよ」といったように、子どもがプレッシャーを感じないように配慮してあげることが大切です。
以前と同じように通学するのが難しいときは、段階的に復学を目指すための方法も考えるようにしましょう。教室以外の部屋で学ぶ別室登校・保健室登校から始める方法や、教育支援センターが運営している適応指導教室で学ぶ等、複数の選択肢があります。
適応指導教室は、長期間学校を休んでいる小・中学生を対象に、学問や集団生活を学べる場です。一部では高校生も受け入れているので、本格的な復学前の準備に活用できます。いずれも、通っていた学校との連携が必要になるため、子どもが復学の意思を示すようになったら早めの段階で相談しておくとスムーズです。
学校以外の場所で勉強する
不登校で抱える不安の1つに、勉強の遅れが考えられます。学ぶ環境という面だけを重視すると、学校へ復学するのが理想的かもしれませんが、勉強は学校以外の場所でも取り組めます。復学が困難なら、学習塾や予備校、フリースクール等で学習を進めることも検討してみましょう。
子どもが外へ出ることに抵抗を示す場合には、家庭教師に勉強を見てもらうのもよいかもしれません。最近では、訪問型ではなくオンライン家庭教師も増えています。人と直接対面することに抵抗がある場合でも、必要な環境を整えれば指導を受けられます。
子どもにとって最適な学び方を選ぶために、日常生活の自然な会話を通じて意思や希望を確認し、子どもがストレスなく学べる環境を用意してあげましょう。
転校する
今通っている学校へ復学するのが難しい場合には、転校も候補に含めてみましょう。転校で子どもの環境が大きく変われば、状況が好転するかもしれません。高校生の場合、編入や転入のハードルが低い通信制の学校を選択する方法もあります。普段はeラーニングなどを中心に自宅で学び、決められた時間だけスクーリング(登校しての学習)に通えばいいので、自宅の外へ出ることが苦手な子どもでも勉強を進められます。
通信制高校の中には、発達障害のサポートやフォローに力を入れている学校もあり、そのような学校では、生徒の個性を重視した教育方針を掲げていたり、発達障害の特性を理解した学校運営を行っていたりするのが特徴です。ケアの充実した学校なら、子どもも安心して学校に通えるようになるかもしれません。
高卒認定試験を受ける
高卒認定試験とは、高校を卒業した人と同等以上の学力を有するかどうかを判断するために行われている試験です。試験は文部科学省によって実施され、合格すると短大や専門学校、大学の受験資格が得られます。高校に在籍していても受験できるので、大学への進学を希望している場合は選択肢の1つになります。
就職する
勉強にあまり興味を持てなかったり、復学や進学を希望しなかったりする場合には、就職も視野に含めてみましょう。中卒の場合、年齢制限や資格などの関係で選べる仕事は限られてしまいますが、働きたいという気持ちがあれば、アルバイトをしながら自分に合う仕事、やりたい仕事を見つけ、就職を目指す等の方法もあります。
就職移行支援を受けられるサービスを活用する
18歳以上になると、障害や難病のある方を専門に就労を支援してくれるサービスを利用できるようになります。就職移行支援サービスとは、就職に必要な職業訓練の提供や社会人としてのマナー、ルールの指導などが受けられるサービスです。
「ウェルビー株式会社」が提供している就労移行支援サービスは、障害または難病のある18歳以上65歳未満の方が対象です。障害について深く理解しているスタッフと二人三脚で働くために必要な知識とスキルを習得しつつ、就職活動の手厚いサポートを受けられるのがメリットです。
また、自立訓練「ウェルビーチャレンジ」というサービスも利用できます。自立訓練は、自分らしく暮らしたり働いたりすることについて考え、新たなチャレンジに向けて必要なスキルを身に付けるためのサービスです。
まとめ
発達障害のある子どもが不登校になったときは、過度に不安になったり接することを恐れたりせず、子どもに寄り添う姿勢が大切です。子どもがどのように考えているのか、日常会話の中からくみ取り、意思を尊重しながら将来のことを考えていきましょう。
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