
発達障害のある方に向いている仕事は?
受けられる支援サービスも紹介
発達障害がある、またはその疑いがある学生の中には「仕事に就いても続くかどうか不安」「そもそも向いている仕事が自分でもよくわからない」といった悩みを抱えている方が多いのではないでしょうか。発達障害のある方が強みを活かして仕事を続けていくには、傾向や特徴をよく理解し、ご自身に合った仕事を見つけることが大切です。本記事では、発達障害に向いている仕事の例を紹介します。就職方法や活用できる支援サービスもあわせて紹介するので、就職に向けて一歩を踏み出したい方は、ぜひ参考にしてください。
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- 発達障害の方の
発達障害がある方に向けて、進学や就職に関する選択肢を症状別にご紹介。また困ったときの相談先となる各種機関についても解説しています。
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- 発達障害がある方の
発達障害のある方の就職方法や実態について解説いたします。また発達障害のある方に向いている仕事などについても紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
発達障害のある方に向いている仕事は?
発達障害には様々な種類が存在します。ここでは、以下の症状についての特徴と症状別に向いている仕事を解説します。
- ASD(自閉スペクトラム症)
- LD(学習障害)
- ADHD(注意欠如・多動性障害)
これから紹介する仕事はあくまで一例にすぎません。一般的に向いているとされる仕事でも、人によっては合わない場合があることを十分に理解しておきましょう。
ASD(自閉スペクトラム症)の場合
ASD(自閉スペクトラム症)は、周囲とのコミュニケーションや社会性に関連する発達障害です。個人差はありますが、一般的に次のような特徴が挙げられます。
- 周囲とのコミュニケーションで問題が生まれやすい(一方的に話してしまう、相手によって言葉遣いを変えられない等)
- 特定のことへのこだわりが強く、臨機応変な対応が苦手
- 曖昧な指示から相手の意図を汲み取るのが難しい
- 急に予定が変わったり、ルールが変わったりすると混乱しやすい
ASD(自閉スペクトラム症)の方の多くは臨機応変な対応が苦手な一方、特定のことへのこだわりが強みになる可能性があります。例えば「明確なマニュアルがある」「ルール変更が少ない」「手順が決まった定型作業が多い」といった条件に当てはまる仕事であれば、特徴を強みに変えて活躍できる傾向にあります。また、視覚過敏や聴覚過敏等の感覚過敏がある方は、在宅勤務が可能だと働きやすくなる方もいます。
向いている仕事の例
特徴を踏まえると、ASD(自閉スペクトラム症)の方には次のような仕事が向いている傾向にあります。
- トラック運転手
- プログラマー
- ライター
- 設計士
- CADオペレーター
- ライン作業
- 設備点検
文章の執筆や校正、校閲のような仕事は、専門知識を活かして活躍できる点が魅力です。特定のジャンルに深い知識を有する方や、言葉に強いこだわりがある方は、就職先の候補として検討してみてください。
上記で挙げた例以外にも、同様の傾向を持つ仕事が向いている可能性があります。「マニュアルがある」「ルール変更が少ない」「定型作業が多い」「こだわりを活かせる」等に着目して仕事を探してみましょう。
LD(学習障害)の場合
LD(学習障害)は知的な発達の遅れは見られないものの、「読む」「書く」「計算する」といったことを苦手とする障害です。障害の種類によって苦手分野が異なります。
- 読字障害→読み書きに時間がかかったり、間違えたりすることが多い
- 書字障害→メモをとるのが苦手
- 算数障害→計算や時間管理が苦手
仕事を探す際は、「苦手をどう補うか」がポイントです。苦手な部分を周りの人やツールの力で解決できる仕事を選ぶと、働きやすくなります。
向いている仕事の例
LD(学習障害)の方は、次のような仕事に向いている傾向にあります。
- 軽作業
- ライン作業
- 清掃
- デザイナー
- イラストレーター
- アニメーター
- 俳優
物事を視覚的に把握するのが得意な方には、デザイナーやイラストレーター、アニメーター、俳優等がおすすめです。こうしたクリエイティブな仕事では表現力を発揮しやすく、障害によるストレスをあまり感じずに業務に集中できる可能性があります。
事務職のように読み書きの能力が求められる仕事でも、計算や事務作業にツールを活用できれば問題なく業務に従事可能です。「業務にパソコンやタブレットを活用する」「読む・書く・計算する能力を求められる場面が少ない」等の条件に当てはまる仕事を中心に探してみましょう。
ADHD(注意欠如・多動性障害)の場合
ADHD(注意欠如・多動性障害)の方は、不注意・多動性・衝動性等の傾向が見られます。個人差が大きい障害ですが、一般的に次のような特徴があります。
- もの忘れが多い
- 予定管理や整理整頓が苦手
- 色々なことに関心を持つ
- 考えるよりも先に行動に移す
- じっとしていられない(待つのが苦手)
不注意の傾向が強い方は、発想力や独自性を活かせる仕事に向いている傾向にあります。多動性や衝動性が強い方は、行動力を活かせるような仕事だと、強みと業務内容がマッチするかもしれません。
向いている仕事の例
ADHD(注意欠如・多動性障害)の方の特徴を踏まえると、「得意分野で集中しやすい仕事」「行動力を活かせる仕事」に向いている可能性があります。具体的な仕事の例は以下の通りです。
- 調理師
- デザイナー
- プログラマー
- 介護職
- 営業職
- 販売職
特定のことへの高い集中力や行動力は、ADHD(注意欠如・多動性障害)の方が持つ強みです。調理師や介護職等の取り組むことが明確な仕事や、営業職のように積極的な姿勢が求められる仕事を選ぶと、強みを活かしやすくなります。
紹介した例はごく一部であり、似たような傾向の他の仕事にも向いている可能性があります。ご自身の特徴をよく理解し、強みを活かせるような仕事がないか探してみましょう。
発達障害のある方の就職方法
発達障害のある方は、一般採用枠もしくは障害者採用枠で就職する方法があります。それぞれの特徴とメリットを確認していきましょう。

一般採用枠での就職
一般採用枠での就職は、発達障害をオープンにせず、企業や組織と労働契約を結んで働く方法です。障害者採用枠に比べて仕事の選択肢が多く、平均賃金も高い傾向にあります。主なメリットは以下の通りです。
- 仕事の選択肢が多い
- 平均賃金が高い
- キャリアアップを目指しやすい
- 周りから必要以上に気を遣われずに働ける
選択肢が多いため、ご自身の特徴にあった適職を選ぶと仕事が続けやすくなります。障害者採用枠では「希望する仕事が見つからない」「働く場所が限定されてしまう」といった場合には、一般採用枠での就職がおすすめです。
ただし、発達障害に対する配慮が得られない可能性がある点には注意が必要です。発達障害をオープンにしないことで働きにくさを感じるケースや、十分なサポートを受けられないケースがあります。
障害者採用枠での就職
障害者採用枠は、企業が障害者の就職を促進するために設けている雇用枠です。発達障害の方が就職するには、精神障害者保健福祉手帳または療育手帳が必要になりますが、以下のようなメリットがあります。
- 障害の特徴に応じた配慮を受けやすい
- 苦手なこと、得意なことを周囲に理解してもらえる
- ミスを防ぐ取り組みや仕事の相談がしやすい
- 障害をオープンにするため、ストレスや不安を解消しやすい
一般採用枠に比べると求人が限定されるものの、周りからの理解を得られやすいのが大きなメリットです。一般採用枠で障害を隠しながら働くのが困難な方や、ストレス・不安を抱えることなく働きたい方は、障害者採用枠での就職を検討してみてください。
発達障害のある方が受けられる就職支援サービス
様々な公的機関・民間企業が就職支援サービスを提供しています。「就職活動の進め方がわからない」「どのような仕事が適職なのか判断しにくい」等で悩んでいる方はぜひ活用しましょう。主な相談先は以下の通りです。
- ハローワーク
- 障害者就業・生活支援センター
- 地域若者サポートステーション
- 転職エージェント
- 就労移行支援サービス
各相談先の特徴を紹介します。
ハローワーク
ハローワークは厚生労働省が運営する職業紹介機関です。全国に500ヵ所以上あり、一般採用枠と障害者採用枠の両方の求人を取り扱っています。全都道府県に設置されているため、地域に密着した求人が多いのも特徴です。
主な支援内容
- 専門職員による支援:障害の特徴や希望職種等に応じ、職業相談や職業紹介、職場適応指導
- ハロートレーニング:職業スキルや知識の習得を目的にした訓練。学卒者、障害者向けのコース有
- 障害者トライアル雇用制度:一定期間(原則3ヵ月)働いてみて、求職者と事業主がお互いの理解を深めてから継続雇用に移行
ハローワークには、障害に関する専門知識を持つ職員として、「精神・発達障害者雇用サポーター」や「障害学生等雇用サポーター」が配置されています。専門家にアドバイスをもらいながら、就職を検討し始める準備段階から職場定着まで一貫したサポートを受けることが可能です。
中学生や高校生がハローワークを利用することは基本的に不可となります。未成年者が仕事を探す際には、保護者の同意が求められる場合があるため、事前に学校(担任の先生や進路指導の先生など)や保護者と相談したうえで利用することが推奨されます。
障害者就業・生活支援センター
障害者就業・生活支援センターは、仕事に限らず、生活面でも障害者をサポートする機関です。「発達障害があって仕事が続かないかも」「発達障害で仕事を覚えられないかも」といった悩みに対応しています。全国に300ヵ所以上設置されており、ハローワークと連携しながら仕事探しや生活をサポートしています。
主な支援内容
- 就職活動の支援:仕事選びの相談、スキル・強みの確認、履歴書作成、面接対策等
- 定着支援:就職後の人間関係や仕事の悩みに対応
- 生活面の支援:生活習慣や健康管理、各種手続き等をサポート
障害者就業・生活支援センターは障害者手帳がなくても利用は可能です。医師による診断を受けていない場合は、事前に最寄りの支援センターへ確認してみましょう。
地域若者サポートステーション
地域若者サポートステーション(通称:サポステ)は、働くことに悩みを抱える人に対し、無料で就職支援を行う機関です。対象となるのは15~49歳までの「現在働いていない人」です。障害のない方はもちろん、障害のある方も対象にした施設ですが在学生は利用できない点に注意しましょう。
主な支援内容
- 就職活動に関する情報提供
- コミュニケーション講座
- ビジネスマナー講座
- パソコン講座
- 就業体験
- 就活セミナー(面接・履歴書指導等)
- 定着、ステップアップ支援
など
就職の相談に加え、就業体験やビジネスマナー講座、パソコン講座等の支援も受けられるのが魅力です。全国に177ヵ所設置※されており、就職等率※(就職等者数/新規登録者数)は71.7パーセントにのぼっています。
※設置数、就職等率ともに2023年度時点
就職(転職)エージェント
就職(転職)エージェントでも、発達障害がある方の就職をサポートしています。キャリア相談や求人紹介だけでなく、選考対策や企業との交渉の代行等、幅広い支援を受けられるのがメリットです。
主な支援内容
- キャリア相談:今後のキャリアや仕事選びのポイントについての相談
- 求人紹介:希望や特徴に合う求人の紹介
- 選考対策:応募書類の作成や面接対策のサポート
- 企業との交渉:面接の日時や入社日、給与等について交渉を代行
- 職場定着支援:入社後も定期的なヒアリングを実施して定着を支援
就職(転職)エージェントでは、就職活動の進め方について、経験豊富なキャリアアドバイザーが丁寧にアドバイスしてくれます。キャリアの相談から入社後まで継続的なサポートを受けられるため、予定を立てるのが苦手な方や、何から準備を進めてよいのかわからない方におすすめです。ただし、サービスによっては登録可能な年齢に制限を設けているものもあるため、中卒・高卒の方が利用できない場合があります。利用可能かどうかはエージェントに確認が必要です。
就労移行支援サービス
発達障害がある方の就職は、就労移行支援事業所を活用する方法もあります。就労移行支援事業所とは、18歳以上65歳未満で障害や難病のある方を対象に、就職に必要なスキルの習得や職場定着をサポートする機関です。厚生労働省の調査によると、全国に3393ヵ所の事業所が設置されています(2022年時点)。
主な支援内容
- 応募書類添削・面接練習
- 職場実習
- コミュニケーション訓練
- ビジネスマナー講座
など
利用期限は、「訓練・就職活動で2年」「職場定着支援で6ヵ月」です。就労定着支援事業を併設している事業所であれば、そのまま継続して最大3年の職場定着支援を受けることが可能です。2つの福祉サービスを利用すると、最長で5年6ヵ月の支援が受けられます。
なお、18歳未満の中学生・高校生の利用は原則として難しいですが、児童相談所長の意見書があれば、利用することが可能となる場合もあります。
また、大学生が利用する場合、授業やアルバイトとの兼ね合いを考え、学業との両立が可能かを事前に確認することが重要です。また、支援期間中は原則アルバイトが禁止されるため、収入面の計画も考慮して利用を検討する必要があります。
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- 大学生でも就労移行支援は利用できる!
就労移行支援は、就職に向けて必要なスキルを身に付けるためのサポートを提供する制度です。大学生が就労移行支援を利用する際の条件や注意点について詳しく解説します。
就労移行支援なら「ウェルビー」
就労移行支援事業所「ウェルビー」では、社会人基礎力・実践力・持続力を身に付けるためのサポートを展開しています。一人ひとりにあった支援計画に基づき、仕事に必要なスキル・知識を身に付ける訓練を実施していますので、ぜひ利用してみてください。
ウェルビーで受けられる4つのサポート
- 生活トータルサポート:生活リズムの調整、個別面談、個別支援計画
- スキル習得サポート:ビジネスマナー講座、パソコン訓練、オフィスワークシミュレーション等
- 就業活動サポート:応募書類作成、模擬面接、就職セミナー、企業見学、職場実習等
- 卒業後サポート:個別面談、職場訪問、OBOG会参加等就職後も職場で長く働き続けられるようにサポート
また、ウェルビーでは「ウェルビーチャレンジ」と呼ばれる自立訓練(生活訓練)サービスを提供しています。自分らしく暮らし、働くことを目的に、身体の健康づくりや生活の知恵を身に付ける講座等、様々なカリキュラムにチャレンジしていきます。
就職活動中の学生
(高校3年、大学4年生)のみなさんへ
私たちウェルビーはうつ病や発達障害等の人のための就労移行事業所です。
あなたの個性や長所を最大限に伸ばすサポートをします。
色々悩んだり不安になることはあるけど正直に全部、あなたの想いを打ち明けて
最も後悔しない未来のキャリアプランをウェルビーと一緒に考えてみませんか。
就活のご相談やセンター体験が可能です
まとめ
発達障害のある方が就職を目指す際、まず苦手分野と得意分野を明確にすることが大切です。障害の種類によって向いている仕事が異なるため、ご自身の特徴をよく理解し、どのような仕事であれば強みを活かして働けるのかを考えてみましょう。
就職で困りごとがある場合には、ハローワークや障害者就業・生活支援センター、地域若者サポートステーション、転職エージェント、就労移行支援サービス等が助けになります。1人で抱えこもうとせず、まずは学校の先生や保護者と相談し、必要に応じて外部のサポートを受けながら適職を見つけていきましょう。
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