発達障害と似た症状の障害・病気を解説|それぞれの特徴や違い
発達障害とは脳機能の働き方が生まれつき他の人とは異なることによって、発達するペースや能力に特徴がある状態です。これによって、物事の感じ方や考え方が周囲と異なり、日常生活や学校で戸惑うことが多くなります。その一方、ご自身が発達障害かどうかは分かりにくいことが多く、似た症状の障害や病気もあるため、判断に悩んでいる方もいるのではないでしょうか。
そこで本記事では、発達障害の概要や特徴のほか、発達障害によく似た症状の障害・病気について解説します。ご自身の状況を理解するための一助として、ぜひご参考にしてください。
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発達障害とは、生まれつきの脳機能の違いに原因があることにより、周囲の人・環境とのミスマッチが生じ、生きづらさや困難を感じる障害です。障害の特徴や種類について、理解してみませんか。
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発達障害の種類にはどんな特徴がある?
発達障害の方は一般に、他人とのコミュニケーションや臨機応変な対応が苦手で、問題を解決したり想像力を働かせたりするのにも苦労しがちです。そのため、日常生活で不便さを感じたり、他人から誤解を受けることも珍しくありません。
ただし発達障害と一口にいっても、実際にはASD(自閉スペクトラム症)、LD(学習障害)、ADHD(注意欠如・多動性障害)等の種類に分類され、それぞれ異なった特徴があります。以下では、これらの種類の特徴について解説します。
ASD(自閉スペクトラム症)
ASD(自閉スペクトラム症)の主な特徴は次の通りです。
- 対人関係が苦手である
- 特定の物事に強いこだわりがある
- 音や光、触感、味覚等の感覚が過敏である
ASD(自閉スペクトラム症)の方は、他人とのコミュニケーションが苦手であったり、特定のことに強いこだわりを持ったりする傾向があります。また、「表情が乏しい」、「他人と視線を合わせない」、「一人遊びを好む」等の行動を取ることも多く、その影響で人間関係を築くのによく困難を覚えます。
さらに、食べ物の好き嫌いが激しい場合もあります。これは脳機能の影響で、特定の刺激に対して過敏に反応してしまうためです。
LD(学習障害)/SLD(限局性学習障害)
LD(学習障害)の特徴は次の通りです。
- 読字障害(文字や文章を読む、文字の形を認識するのが苦手である)
- 書字障害(文字を書く、文章を作成したりするのが苦手である)
- 算数障害(計算や数の概念を理解するのが難しい)
読み書きや計算等、特定の学習分野の習得に過度の困難を抱えてしまいます。例えば、「文字の読み書きができない」、「読解力が低い」、「簡単な計算ができない」、「時計が分からない」といったことが挙げられます。
ただし、ここで注意したいのは、LD(学習障害)の方は、上記のような特定分野以外の知的能力については問題がないということです。そのため、学校教育が始まる前後までは、LD(学習障害)であると気付かれないことも少なくありません。特定の分野だけ極端に学習が苦手という場合は、LD(学習障害)の可能性があります。
ADHD(注意欠如・多動性障害)
ADHD(注意欠如・多動性障害)の特徴は次の通りです。
- 不注意(忘れ物が多い、話を聞いていない、約束を忘れる、集中力が続かない)
- 多動性(授業中に席を離れる、静かにできない、じっとしていられない)
- 衝動性(思いつきを考えることなしに実行する、順番を待てない、他人の話を遮る)
ADHD(注意欠如・多動性障害)には、生まれつき不注意や多動性、衝動性が強い等の特徴が見られます。典型例は、「忘れ物が多い」、「授業中でもじっと座っていられない」、「思いついたことを即実行する」、「順番を待てない」等です。
しかし、個人差が大きく、不注意だけが目立つ場合もあれば、多動性や衝動性もセットで目立つ場合もあります。また、成長過程では自覚できない方もいる一方で、自分の特徴やその対処法に気付き、症状の緩和に成功する方もいます。
特性が重なっている場合もある
発達障害は、ASD(自閉スペクトラム症)、LD(学習障害)、ADHD(注意欠如・多動性障害)、の特徴が個別に出る場合もあれば、2つ以上の特徴が複合的に出る場合もあります。例えば、「勉強が苦手で集中力も途切れやすい」といった場合は、ADHD(注意欠如・多動性障害)とLD(学習障害)の両方に該当する恐れがあります。
本記事で紹介している特徴や事例はあくまで一例にすぎません。正確な診断が必要な場合は病院等の専門機関を受診しましょう。
発達障害に似た症状の障害・病気にはどんなものがある?
一般的に発達障害は、コミュニケーション障害や精神障害等とひとくくりにされてしまうことが多くあります。たしかに病気や障害の中には、発達障害の特徴と似た症状を持つものもあります。しかし、これらはあくまで別物である点に注意が必要です。以下では、発達障害と混同されやすい障害・病気を紹介します。
コミュニケーション障害
コミュニケーション障害は神経発達症の1つで、コミュニケーションや人間関係を築くのが困難になる障害です。具体的には、「言葉を正しく発音できない」、「状況に応じて言葉を使い分けられない」、「曖昧な表現や、身振り・表情等による意思疎通が難しい」といった症状があります。
コミュニケーションが苦手という点は発達障害(特にASD)と類似しています。しかし、発達障害の場合は「こだわりが強い」、「常同性(同じ行動を繰り返すこと)が強い」等、コミュニケーション障害にはあまり見受けられない特徴があるのが大きな違いです。
精神障害
発達障害は生まれつきの脳機能の違いが原因であり、精神障害のように後天的な心の病気とは異なります。その意味で発達障害と精神障害は明確に区別されます。しかし、両者は表面的な症状に似通っている部分があったり、併存したりすることがあるため、しばしば混同されがちです。以下では、発達障害と特に似た部分のある精神障害を紹介します。
気分障害
気分障害とは、うつ病や双極性障害等、社会生活に不都合が生じるほど気分が浮き沈みしてしまう状態の総称です。双極性障害のうつ状態では、ADHD(注意欠如・多動性障害)と同様に、多動性や衝動性が強く目立つことがあります。
また、抑うつ状態では心のエネルギーが枯渇しているために、物事に対する関心が薄れたり、表情が乏しくなったりすることがあります。この状態もまた、発達障害にも共通して見受けられる特徴です。このように、発達障害と気分障害は似通った特徴があるうえ、併存している場合もあるため、はっきり見分けるのが難しいこともあります。
統合失調症
統合失調症は、気持ちや考えをうまくまとめられず、意欲の低下や幻覚・幻聴、妄想等に悩まされてしまう疾患です。発達障害には通常、これらの症状はありませんが、両者が併存することはあり得ます。近年では発達障害と統合失調症はスペクトラム(連続体)であり、両者には何らかのつながりがあると考える専門家もいます。
不安障害
不安障害とは、パニック障害(パニック症)や社会不安障害等の、精神的な不安が過度に生じてしまう症状の総称です。基本的な区別としては、発達障害は生まれつきの特徴であるのに対して、不安障害は特定の出来事等をきっかけに後天的に生じてしまう障害であることです。
また、発達障害の場合は、状況に対して自身がどのように対処すれば分からないことによって不安を感じることが多い一方、不安障害の場合は、それが頭では分かっていても不安になってしまうことが違いだと指摘する声もあります。とはいえ、発達障害の方は様々な不安を強く抱えやすく、不安障害を併発していることも多々あります。そのため、両者を実際に区別するのは非常に困難な場合もあります。
適応障害
適応障害とは、自身が置かれている環境に馴染めず、不安や抑うつが強く出てしまう状態です。特定の状況や出来事に由来するストレスが原因で、気分の落ち込みやいらだち、不眠等の症状が現れ、社会生活に支障をきたしてしまいます。
発達障害の方は、周囲から誤解を受けたり、環境に対するストレスを感じたりすることが多いため、適応障害と似た特徴が見られることも少なくありません。ただし、発達障害が生まれつきの特徴であるのに対し、適応障害は特定のきっかけで発症してしまうことが多いので、そこが判別のポイントです。
摂食障害
摂食障害は、異常な食事行動や、認知のゆがみ等が原因で体重・体型に過度のこだわりを持ってしまう症状です。認知のゆがみとは、例えば実際にはやせ型であるのに、「自分は太っている」と思い込んでしまうことを指します。
摂食障害には、拒食症(神経性やせ症)や過食症(神経性過食症)、過食性障害、回避制限性食物摂取症等の種類があります。摂食障害は特に10代から20代の女性に多く、従来は心因的な障害であるという見方が強かったのですが、最近は発達障害との関連性を指摘する声もあります。
愛着障害
愛着障害とは、乳幼児期に親等の養育者との関係に問題があったことが原因で、他者と信頼関係を築いたり、適切な距離感を保ったりすることが難しくなる精神障害です。コミュニケーションが苦手なことや、特定の行動に執着しがちであること等、愛着障害と発達障害には類似した特徴があります。ただし、愛着障害は先述の通り、乳幼児期におけるケアの不足という後天的な要因によって発症する点が大きな相違点です。
パーソナリティ障害
パーソナリティ障害は、物事の考え方や感情のコントロール、コミュニケーション等に他の人と異なることで苦しんだり、社会生活に支障が出たりする状態です。パーソナリティ障害の発症は、遺伝的要因と環境要因の両方が関係していると考えられます。以下では、発達障害と混同されやすいパーソナリティ障害として、境界性パーソナリティ障害と自己愛性パーソナリティ障害の2つを解説します。
境界性パーソナリティ障害
境界性パーソナリティ障害とは、気分や感情が目まぐるしく変わり、対人関係を安定してこなすのが難しくなる障害です。この障害の特徴は、他人から見捨てられることを過度に恐れたり、感情のブレーキがきかず、些細なことで強い怒りを感じたりすること等です。そのせいで傷つきやすく、自傷行為を繰り返してしまう方もいます。発達障害が原因で、境界性パーソナリティ障害を併発する場合もありえます。
自己愛性パーソナリティ障害
自己愛性パーソナリティ障害とは、自身を過大評価していることや、現実離れした理想像を持っていることが原因で、人間関係の構築や社会活動が困難になる障害です。一般にこの障害は、周囲の人の感情や立場に無頓着な「無自覚型」と、周囲の目を過度に気にしてしまう「過敏型」に大別されます。自己愛性パーソナリティ障害の方は、自身が特別な人間であるかのように振る舞ったり思い込んだりしていることが多いですが、それは根底的には自身に自信がないことの裏返しであると考えられます。
HSP
HSP(Highly Sensitive Person)とは、感受性が強く、視覚や聴覚等外部からの刺激に敏感な性質を持つ人を指します。HSPの特徴としては、物事を深く考える傾向、他人の感情に対する強い共感、外部からの刺激に圧倒されやすいこと等が挙げられます。
「感覚が過敏である」というHSPの特徴は、発達障害にも共通するものです。ただし、HSPとはあくまで人間の一般的な気質を指した概念であり、発達障害のような診断名ではありません。HSPと発達障害が併存する場合もあります。
発達障害から二次障害(併存症)が発生しているケースもある
発達障害によって環境とのミスマッチが起きたり、適切な支援を受けられなかったりすることが原因で発症した病気・障害のことを二次障害と呼びます。例えば、発達障害で対人関係がうまくいかないことが原因で孤立し、気分障害や適応障害等を発症してしまうことは珍しいことではありません。
二次障害が引き起こる主な要因はなに?
二次障害は、発達症状特有の性質と環境とのミスマッチで起こりやすくなります。特に、自身が発達障害である自覚がない場合は、周囲の人に理解を求めたり、適切な支援にアクセスしたりするのが難しいため、強いストレスを抱えがちです。その結果、二次障害として精神障害が併発しやすくなります。ただし、発達障害だからといって必ずしも二次障害が発生するわけではありません。周囲から適切な理解やサポートを受けられれば、二次障害の発生リスクを回避することも可能です。
まとめ
精神障害やパーソナリティ障害、HSP等、発達障害とよく似た病気・障害は多数あります。これらは併存していることも多いため、それぞれの違いを見分けるのは非常に困難なことが少なくありません。
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