発達障害とは?
種類や特徴、基礎知識を解説!
うまく周囲になじめない、みんなできることが自分はできない等の場面に直面したとき、
「もしかしたら自分は発達障害なのでは?」と思った経験がある人もいるでしょう。
しかし、発達障害が疑われる場合でも必要以上に不安にならずに、まずは発達障害について知識を深めることが大事です。
自分自身が日常生活を過ごしやすくするために、また周囲に正しい理解を求めるためにも発達障害とはどういうものか、
どう向き合えば良いか等を知っておきましょう。
この記事では、発達障害の種類や特徴、二次症状として発症する可能性がある精神疾患等について詳しく紹介します。
ぜひ参考にしてみてください。
発達障害とは
発達障害とは、生まれつきの脳の機能の違いが原因で、物ごとのとらえ方や行動等にある種の特性を持つ障害を言います。この特性により他者とのコミュニケーションがうまくいかず、生きづらさを感じて日常生活に支障をきたすことがあります。
「発達障害」とひとえにいっても、以下のように様々な症状があります。
- ASD(自閉スペクトラム症)
- LD(学習障害)
- ADHD(注意欠如・多動性障害)
- PDD(広汎性発達障害)
一般的にこれらの症状は、低年齢において発現するものとされていますが、高校生や大学生等、ある程度大きくなってから診断されることも決して珍しくはありません。
発達障害の診断は医療機関で行われ、精神科医による面談や検査を経て、総合的に判断されます。
厚生労働省の調査によると、2016年時点で発達障害と診断された人は、全国で推定48万人以上です。
しかし、2012年に文部科学省の調査では、小中学校において1クラスのうち6.5%の生徒が発達障害を抱えている可能性があるという結果が出ています。この割合を日本人の人口に換算すると、発達障害を抱える人は800万人以上という推計になります。
つまり、診断を受けていない状態の潜在的な発達障害者の人も多いと考えられるのです。
幼児期には判断されていなくても高校生や大学生になってから検査を受けて、発達障害だと診断される可能性も十分ありますし、それは決しておかしいことではありません。
出典:厚生労働省「平成28年生活のしづらさなどに関する調査(全国在宅障害児・者等実態調査)」
文部科学省「通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果について」
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発達障害の種類・特徴
ここでは、発達障害の種類とそれぞれの特徴について、解説していきます。
発達障害は大きく以下の3つに分けられます。
- ASD(自閉スペクトラム症)
- LD(学習障害)
- ADHD(注意欠如・多動性障害)
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
ASD(自閉スペクトラム症)
ASD(自閉スペクトラム症)は、コミュニケーションが苦手であったり、強いこだわりを持っている等の特性があります。以前は「自閉症」「アスペルガー症候群」「広汎性発達障害」等と種別が細かく分かれていましたが、今は総称してASDと呼ぶことが多くなりました。
【ASDの主な特徴】
- 「ちょっと」「多め」等のあいまいな表現に困りやすい
- 「頑張っていますね!」等の励ましの言葉等にそっけない返事になってしまいがち
- 人との距離感がつかめず、人間関係に悩みやすい
- 話している人と視線を合わせることに難しさを感じやすい
- 常に同じ行動でなければ、イライラしやすい
- 物の位置や手順の変更にソワソワしてしまうことが多い
- 周囲の音が気になって集中しにくいことがある
また、周囲の人と違う行動をして「空気が読めない」と言われてしまい、学生生活では人付き合いに戸惑ったり、職場では臨機応変に動けなかったりと、悩みやトラブルを抱えてしまう傾向があります。
LD(学習障害)
LD(学習障害)とは、基本的な知的発達に遅れは見られないものの、「話す」「聞く」「読む」「書く」「計算・推測する」等、特定の分野だけが他の人と比べてうまくできない状態を指します。
苦手なことができないだけと思われてしまい、障害ではなく、単に「頑張ればできる」「努力が足りない」「勉強不足」等と周囲に判断されてしまうことがあります。
【LDの主な特徴】
- ① 読字障害
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- マニュアルが読めない
- よく文章を飛ばして読んでしまう
- ② 書字障害
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- カタカナがわからなくなる
- 電話のメモを取ることができない
- ③ 算数障害
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- 九九ができない
- 時計を読むのに時間がかかる
大人になってLDと診断された場合は、ほかにも何らかの発達障害や精神疾患を抱えているケースが多いと言われています。
ADHD(注意欠如・多動性障害)
ADHD(注意欠如・多動性障害)は、症状が「不注意」と「多動・衝動性」の2種類に分けられることが特徴です。
【不注意の主な例】
- 細かいことに注意を向けにくい
- 最後まで継続できない
- 気が散りやすい
- 忘れ物や約束を忘れる・・・等
不注意の症状が強いと「だらしのない性格」と誤解されてしまうこともあります。
【多動性の主な例】
- じっとしていたり黙っていたりすることが苦手
- 刺激に反応し、考える前に行動してしまう
多動・衝動性は幼少期に強く表れ、年齢を重ねるにつれて比較的改善されると言われています。ただし社会人の場合、仕事をする中で支障をきたす恐れもあります。
社会生活が思うようにいかなくなることで、自己肯定感が低くなり、うつ病等へと発展する可能性もあります。
しかし、ADHDであっても自分の特性を客観的に理解し、不得意な状況にも対応できるように工夫し、個性を強みに変えることも可能です。
グレーゾーンに関して
発達障害とはっきりと診断できないものの、発達障害に近い特性を持っている状態をグレーゾーンと呼びます。
ここではグレーゾーンについても併せて解説いたします。
グレーゾーン
発達障害の診断にはDSM-5という国際的な基準が用いられ、いくつかある基準のうち1つでも該当しない項目があれば、グレーゾーンと判断される可能性があります。
ただし、DSM-5には数値的な基準があるわけではないため、最終的な見極めは医師の主観によるのが現状です。
また、発達障害といえるほど日常生活に困難がなく、周囲にも影響を与えていない場合や、幼少期の症状を覚えていない場合等は、グレーゾーンと診断されやすくなります。
グレーゾーンの方は、明確に発達障害の診断を受ける方より日常での困難は少ないように思われる傾向があります。そのため社会生活の中で困り感を理解してもらえず、苦労するケースが見られます。
精神疾患について
発達障害とは別に、精神疾患についての種類とそれぞれの特徴について、詳しく解説していきます。
発達障害の方は生活の中の困りごとによるストレスや悩みによって、精神疾患になりやすい(併発する可能性がある)と言われています。
ここで解説する病気や症状は、必ず発達障害がある方がかかる、というわけではありませんが、早めに対処することによって、発症を防ぐこともできます。
うつ病
うつ病とは、精神疾患である気分障害のひとつです。
一日中気分が落ち込む、何をしても楽しめないといった精神的症状や、不眠や食欲がない、体重の増減、気力の減退等の身体的症状が継続して認められると、うつ病と診断されます。
日本では、ADHDと診断された成人202名のうち49%が、またASDと診断された成人339名のうち41.0%が「うつ病の診断を受けたことがある」と回答したという研究報告があります。また、ADHDと診断された成人において、米国では約19%にうつ病の併存が認められたという調査報告があり、欧州でも30~50%にうつ病の症状が1回以上認められたと報告されています。
うつ病を発症する原因のひとつには、心理的なストレスがあげられます。発達障害のある方は、自身の特性とうまく付き合う方法が見つかってない場合、「仕事上のミスを生じやすい」、「人間関係でつまずくことが多い」といった声が多く、自己肯定感や自尊心が低下することでストレスを強く感じやすい傾向にあります。
適応障害
適応障害とは、日常生活(学校や家庭内等)での人間関係、進学や就職といった人生の転機・環境の変化等のストレスが原因となり、心身に様々な症状が現れて社会生活に支障をきたす状態を言います。誰にでも起こりうる心の病気の一つで、「うつ病の手前の状態」と考えられており、早めの対処が必要です。
心理面では、ゆううつな気分で不安になる・焦る・イライラする等の症状が見られます。また身体面における症状も、頭痛・めまい・腹痛・動悸・発汗等様々です。こうした症状が行動面に影響をおよぼすこともあり、学校や職場に行けなくなる等日常生活に支障が出ることもあります。
適応障害の特徴は、本人にとって原因となる出来事が明らかにあることです。原因になっているストレスから距離を置くことが、改善や回復に繋がるポイントとなります。
パニック障害(パニック症)
パニック障害(パニック症)とは、何の前触れもなくめまい、動悸(どうき)、呼吸困難、ふるえ等の自律神経失調症状を起こしたり、激しい不安に襲われる「パニック発作」を繰り返したりする状態のことです。
このような発作を繰り返していると、再び発作が起きる不安感に襲われる「予期不安」を起こすようになります。さらには発作を予感させる状況や場所そのものが恐怖となり、それを避けようとする「回避行動」が起こります。パニック障害が日常生活に支障をきたすのは、これらが主な原因です。
パニック障害は心の病気のため、精密検査を受けても身体的な異常は認められません。100人に1人くらいの割合で起きると言われています。
摂食障害
摂食障害とは、食事に関連した行動に異常が起きる障害です。現在は大きく4つに分類されています。
- ① 拒食症(神経性やせ症)
- ② 過食症(神経性過食症)
- ③ 過食性障害
- ④ 回避制限性食物摂取症
摂食障害の主なサインや症状は以下のとおりです。
- 食事の量やカロリーを過剰に制限する、絶食する
- 食べたものを嘔吐する
- 痩せていても自身の認識では太っていると感じる
- 強い痩せへの願望がある
- 自分ではコントロール不能なほど大量に食べてしまう
- 食べ物のことが頭から離れない
10~20代の若者、特に女性が罹りやすいと言われていますが、環境や性格等様々な要因で誰でも起こりうる病気です。
痩せていることに固執してしまう、衝動的に過食を繰り返してしまう行為の背景には、孤独や疎外感といった心理的な原因も考えられます。また過食という行為で自身の苦しさを表現していたり、心の痛みを解消しようと行動したりすることが病につながっています。
発達障害の対処療法や相談窓口
発達障害には症状に合わせて様々な対処療法があります。また、発達障害に関する悩みや困りごとについて、相談ができる窓口についても併せてご紹介いたします。
発達障害の対処療法
発達障害の主な対処療法は、薬物療法と生活療法です。
ただし、これらは主にADHDとASDに対して行われる療法となるので、LDに対しては症状に合わせた個別の指導が行われます。
薬物療法
薬物療法は、発達障害の一部の症状に対してのみ行われるものです。例えば、ASDのコミュニケーションの難しさやこだわりの強さ等の特性には薬剤の効果はなく、かんしゃくや攻撃性、興奮等の症状に対して、抗精神病薬が使われることがあります。
また、ADHDの不注意や多動・衝動性等は薬剤によって改善されることが期待できます。
生活療法
生活療法として近年デイケア等で行われているのが、発達障害者向けの専門プログラムです。自分が持っている特性について理解を深めたうえで、他人との関わり方、コミュニケーションの取り方等のスキルを学びます。
障害者自身が学ぶソーシャルスキルトレーニング(SST)だけでなく、保護者が学ぶペアレント・トレーニング(PT)もあります。また、本人が生活しやすい環境を調整してあげることも生活療法の一つです。
LD(学習障害)の対処療法
LDでは、それぞれの症状に合わせた対処療法があります。
まず検査やテストによって読み書きや算数等の苦手なことを明確化し、特徴や程度に合わせて指導を行います。
【指導例】
- 文字の読みが苦手な場合:負担がかかりすぎない程度に、徐々に読める文字を増やす
- 九九が苦手な場合:ただの暗記ではなく表を見ながら口に出してみる・・・等
発達障害の相談窓口
「自分は発達障害かもしれない」「発達障害があり、就職活動に不安がある」等の悩みを抱えている場合、一人で悩まずに専門の相談窓口に相談してみましょう。
発達障害について相談ができる、主な相談窓口をいくつかご紹介いたします。
基幹相談支援センター
相談支援とは、障害者の方が抱える悩みの相談に乗り、必要な支援を行うことです。
基幹相談支援センターは、厚生労働省の取り決めにより、設置されている窓口で、地域の相談支援の中心となる機関になります。
具体的には、福祉サービスの利用に対しての相談や、日常生活に関する相談、各相談支援事業所との連携等、総合的に対応しています。
どこに相談したら良いか、分からず困っている場合は、まず基幹相談支援センターへ連絡してみると良いでしょう。
全国各所に設置されているので、お住まいの自治体等につきましては、厚生労働省で公開している下記の一覧表からご確認をしてみてください。
相談支援事業所
相談支援事業所とは、上述の機関相談支援センターと連携している、個別の相談支援事業のことです。より個別の相談に乗ってくれる窓口と考えても良いでしょう。
地域での生活や利用できる福祉サービス、個人的な悩みに対応しています。機関相談支援センターから、地域の相談支援事業所を紹介されることもあります。
行政の福祉窓口
各市区町村等の自治体にも福祉サービスについての相談や手続きについて、相談窓口が設けられています。
お住まいの自治体ではどのような支援をしているのか、直接窓口へ伺ってみたり、ホームページ等で調べてみると良いでしょう。
まとめ
発達障害に関する知識を深めることは、学校生活や職場等での適応力を高め、困りごとや悩みごとを減らすことにつながっていきます。
自分や家族だけで抱え込まず、専門の相談機関・支援機関に相談してみることもぜひ検討してみてください。
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