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軽度知的障害とは?判断基準や年齢別の特徴、診断の流れを紹介

軽度知的障害とは?判断基準や年齢別の特徴、診断の流れを紹介

軽度知的障害は、日常生活に必要な会話や動作ができるため、周囲に気付かれにくいのが特徴です。
しかし、実際には、様々な場面で困難を感じているケースが多く「勉強についていくのが難しい」「友達と仲良くするのが難しい」「空気を読めないと言われる」等の悩みを抱えていることも少なくありません。

軽度知的障害がある方の割合は多いとされていますが、周囲についていこうと必死になって努力した結果、障害に気付かないまま大人になる方もいます。この記事では、軽度知的障害がある方の特徴や直面しやすい困りごと、軽度知的障害の原因、ご自身に軽度知的障害があるかどうか悩んでいるときの相談先等をご紹介します。

軽度知的障害とは知的障害の症状が軽いとされる障害のこと

一般的に軽度知的障害は、18歳未満の発達期に知的発達が実年齢よりも低い状態にあることを指します。日常生活の様々な場面で、難しさや生きづらさを感じるケースが多く「複雑な会話や文章を理解すること」「抽象的な内容を理解すること」「その場の空気を読むこと」「ものごとを進める段取りをつけること」「記憶すること」等が苦手な傾向にあります。

軽度知的障害は周囲に気付かれにくいのが特徴です。そのため、小学校に入学してから、授業の内容を理解できないことに強いストレスを感じ、苦しんでしまうケースも少なくありません。苦労しながらでも身の回りのことはほとんど1人でできるため、学校の教員等に叱られたとしても「もっと努力をして授業についていかなければ」と、心身に不調をきたすまで頑張ってしまう人もいます。

そのため、サポートを受けないまま大人になるケースも珍しくありません。「成人して就職するまで気付かなかった」と言う方は多くいます。また、軽度知的障害の方の中には、ASD(自閉スペクトラム症)やスペルガー症候群、LD(学習障害)、ADHD(注意欠如・多動性障害)といった発達障害が同時に現れることもあります。これらが組み合わさることで、より生きづらさを感じるようになるかもしれません。

軽度知的障害があるかどうかを判断する基準には、IQ(知的指数)と日常生活能力(適応能力)の2つを用います。IQが実年齢よりやや低い50~69で、日常生活能力は正常かやや遅れがあるのも特徴です。

出典:厚生労働省|知的障害児(者)基礎調査:調査の結果

軽度知的障害をチェックする基準はある?

知能検査で測定されるIQは、読み・書き・計算、考える能力やものごとに対する理解がどれほどあるかを判断するために行います。適応能力では評価尺度を使い、集団の中でルールを守って過ごすことや、ご自身の役割を果たせるかといった適応スキルを検査します。

軽度知的障害をチェックする基準はある?

知能指数(IQ)

知能指数(IQ)は、「知的機能の障害」をチェックするための数値です。IQテストでは、誰が測ってもほぼ同じ結果が出るように標準化された検査で行います。成人の平均値は90~109程度です。それに対して軽度知的障害の方のIQは、おおむね51~69です。

また、基本的にはIQ20までが「最重度知的障害」、IQ21~35が「重度知的障害」、IQ36~50は「中度知的障害」、IQ51~69が「軽度知的障害」と判定されます。なお、IQが知的障害と正常知能の境界にある場合は、軽度知的障害ではなく「境界知能」に当てはまります。

ただし、IQの数値だけで知的障害の程度は判定できません。次段で解説する「適応機能」も含めて、総合的に判定します。仮にIQが中度知的障害の範囲でも、適応機能が高ければ「軽度知的障害」と判断されることがあります。
また、反対にIQが軽度知的障害の範囲でも、日常生活への適応能力が低ければ「中度知的障害」と判断されるかもしれません。

日常生活能力水準

適応機能(適応能力、日常生活能力)は、日常生活を送るための能力です。具体的には、セルフケア(衣食住の管理)、自由な時間の使い方、読み書き、お金の管理、人間関係の構築等に関する能力のことで、知的障害かどうかを判断するための大きな要因になります。
この適応機能を測るときは「コミュニケーション」「日常生活」「社会性」「運動」の4項目をチェックするのが一般的です。それぞれ「a(低い)」から「d(高い)」までの4段階で評価が行われます。そして、適応機能の値とIQ値から知的障害の程度が総合的に判断されます。

【年齢別】軽度知的障害は何ができない?特徴や苦手なこと

軽度知的障害がある方の特徴、苦手なことや困りごとは、一般的に次に挙げるようなものです。
ただし、症状の現れ方は人によって違うため、全員に当てはまるとは限りません。ここでは、青年期(16歳以上)での特徴を中心に紹介します。

16歳以上:青年期の特徴

  • 計画的に行動するのが苦手
  • ものごとを覚えるのが苦手
  • 自分で考えて決めることが難しい(人に言われたことはできる)
  • お金に関するトラブルに巻き込まれやすい
  • 複数のことを一度にすることが苦手

乳幼児期(0~5歳)・学齢期(6~15歳)の特徴

青年期以前の、乳幼児期や学齢期では一般的に以下のような特徴がみられます。

  • 自傷行為(わざと頭をぶつける等)
  • 強いこだわりがある
  • パニックになる
  • 多動(同じところでじっとしていられない)
  • 同年代の子どもと比べて言葉が少ない(ママ、パパ等を言わない)
  • 同年代の子どもと遊ぶのが苦手
  • 複雑な文章を理解するのが苦手
  • 授業の内容がよくわからない
  • 人間関係をうまく築けない
  • 友達との距離感をうまく取れない
  • 計算をするのが難しい

軽度知的障害を発症するのはなぜ?3つの主な原因

軽度知的障害になる原因は様々です。そのため、医療機関等で検査を行ったうえで、原因を探ることが大切です。検査をして原因がわかれば、薬による治療や言語療法等を通して、軽度知的障害の症状を和らげることができる場合があります。
しかし、いくら検査をしても原因が特定できないケースも数多くあります。そのため、原因を特定することにとらわれないようにしましょう。ご自身が抱えている困りごとを少なくするための方法を医師等と一緒に考えることが大切です。

1. 病理的要因

乳幼児期の外傷性脳損傷、てんかん等の発作性疾患等、生まれる前の病気(染色体疾患、風疹症・梅毒といった胎児期の感染症等)を含め、様々な病気が知的障害の原因になる可能性があります。染色体異常が原因の場合、中度・重度になるケースも少なくありません。

2. 生理的要因

脳の麻痺、脳の発達不全、代謝異常等も、軽度知的障害の原因になります。遺伝によって現れる知的障害もありますが、発症するメカニズムは非常に複雑です。仮に親に知的障害があったとしても、子どもが絶対に知的障害になるというわけではありません。反対に、親が知的障害でなくても、突然の遺伝子変異によって子どもが知的障害になるケースもあります。

3. 環境要因

脳機能が発達する時期に著しい栄養失調状態に陥るのも原因の1つです。幼児期からの虐待(身体的、性的、心理的)やネグレクトも、知的機能に大きな悪影響を及ぼします。

軽度知的障害の診断を受けられる場所と相談の流れ

軽度知的障害があるかどうか、診断を受けてみたいと思った場合、まず、ご自身が住んでいる市区町村の「支援センター」等に相談してみましょう。支援センターは基本的に無料で利用できます。予約が必要な場合もあるので、事前に問い合わせてから訪れるようにしましょう。

1. まずは最寄りの支援センターなどに相談する

具体的な相談先は以下の通りです。施設によっては利用できる年齢が決められています。

  • 児童相談所(18歳未満)
  • 保健所・保健センター
  • 発達障害者支援センター(18歳以上)
  • 精神保健福祉センター
  • 障害者職業センター(15歳以上)

どこに連絡すればよいかわからない場合には、市役所等の総合窓口に尋ねると担当窓口につないでくれます。

また市区町村によっては、医療機関を訪ねなくても、これらの支援センターで知的障害の検査・判定を行ってくれるケースがあります。各施設は必ずしも医療機関と連携しているわけではないので、医師による診断と専門的な治療を受けたいときは、ご自身でクリニックを受診しましょう。

受診する医療機関が見つけられないときは、支援センターのスタッフに聞いてみてください。また、規模の大きい病院は、基本的に紹介状が必要です。直接訪ねても受診できないので注意しましょう。

2. 勧められた医療機関に連絡を行う

支援センターから医療機関への受診を勧められた場合、もしくはご自身で医療機関での受診を希望する場合は、直接クリニックへ予約を取ってから来院するようにしましょう。次の診療科があるクリニックを受診するとスムーズです。

〇大人(16歳以上)の場合

  • 精神科
  • 神経科
  • 心療内科

〇子ども(0~15歳)の場合

  • 小児科 ※子どもの頃から通っているクリニック等
  • 児童精神科
  • 小児神経科

〇持ち物

  • 健康保険証
  • 乳幼児医療証(該当する子どもの場合)
  • 診療、検査費用

検査は基本的に保険適用内で行われます。ただし、状況によっては保険適用外(自費)の検査を行うこともあります。あらかじめ受診するクリニックに問い合わせておくと安心です。

3. 診断を受ける

クリニックによっても異なりますが、まずは医師が症状や困りごとを詳しく聞き取ります。子どもの頃からの発育歴は重要な情報となるため、可能であれば母子手帳や学校の通知書等の資料も用意しておきましょう。また、保護者から子どもの頃の発育・成長の記録等を聞き取るケースもあります。

さらに、状況に応じて知能検査や適応機能の検査を行い、情報を総合してから知的障害かどうかを判定します。例えば学生の場合には、次のような検査がよく行われています。

WISC(ウィスク)(5歳~16歳11ヵ月まで)
言語的なことの理解力、記憶力、注意集中力、社会性、集中力といった様々な能力を判定できる検査です。
WAIS(ウェイス)(16歳~90歳11ヵ月まで)
WISC(ウィスク)の成人版です。
田中ビネー(2歳~)
日本の風習と時代にあわせた知能検査です。アップデートが繰り返されていて、現在は2003年版の「田中ビネー知能検査V」が最新版です。2~13歳までは、IQとMA(精神年齢)を算出できます。14歳以上はDIQ(偏差知能指数)を算出することで、同年齢の集団とご自身のIQにどのくらいの開きがあるか把握できます。

いずれの検査も、軽度知的障害かどうかをチェックする判断材料の1つです。医師が薬を使う治療やSST(ソーシャル・スキル・トレーニング)等を行うかどうかの目安にもなります。ご自身にとっても、強み・弱みを客観的に見ることが、日常生活の困りごと・負担を軽くするためのヒントになるはずです。
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軽度知的障害と発達障害の関係性は?

軽度知的障害と発達障害には密接な関係性があります。各精神疾患の診断・統計マニュアルである「DSM‒5」では、発達障害の中に知的障害(知的能力障害/知的発達症)が分類されています。つまり、知的障害は発達障害の中に含まれている障害だと言うことです。

発達障害は、ASD(自閉スペクトラム症)、LD(学習障害)、ADHD(注意欠如・多動性障害)等、脳機能により様々な特徴が現れます。知的障害は18歳未満の発達期に症状が現れますが、発達障害は幼少期から現れます。主な特徴として「相手の表情や場の空気を読み解くのが難しい」「相手の話を待てず、興味のあることを一方的に話してしまう」「不快と感じる音に過敏になる」「突発的な出来事へ対応できない」「特定の分野の学習だけが難しい」等の違和感を覚えるケースも少なくありません。

また、軽度知的障害とASD(自閉スペクトラム症)等が重なって現れることもあります。そのため、自覚している日常生活の難しさ・生きづらさ等が、軽度知的障害からくるものではなく、発達障害のよるものだったという可能性もあります。

感じている不安や違和感も、原因が特定できれば適切な対処ができるため、まずは対象となる支援先へ相談してみましょう。

まとめ

軽度知的障害は、日常生活で苦労することが多いにもかかわらず、気付きにくいのが特徴です。そのため、生きづらさの原因と対処法がわからず、強い不安やストレスに悩む方も少なくありません。

軽度知的障害かどうかの診断は、支援センターや医療機関で行いますが、軽度知的障害と一緒に現れることが多い発達障害は、簡易的なセルフチェックによって障害があるかどうかを確認することも可能です。

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