発達障害のある子ども(中学生・高校生)への接し方は?
家族が接する際の注意点を紹介
発達障害のある子ども(中学生・高校生)は障害のない子どもと比べると、どうしても苦手なことが増えるので、特に親として・家族としてどう接していいか戸惑うことが多いと思います。発達障害の特徴によっても接し方の注意点は変わりますので、知識がないと不安になられるのも無理はありません。発達障害の子どもたちと接するにはコミュニケーションの基本とコツがあります。こちらの記事では発達障害の子どもへの接し方や話し方、発達障害の特徴による接し方の注意点を具体的に解説いたします。
発達障害のある子ども(中学生・高校生)への接し方はどうすればいい?
発達障害の子どもたちと接するのに特に専門的知識が必要なわけではありません。ご家族が基本的なコミュニケーションを心がけることやコツを押さえていれば、特に知識がなくても負担を感じずに日常生活を一緒に送ることはできます。無用なストレスを与えないためにも、発達障害の子どもへの接し方は次に挙げることを心がけてください。
具体的な言葉を選ぶ
発達障害の子どもは何かを表現したり説明したりするときに、他の事柄に例えたり、置き換えたりする比喩や、曖昧な表現が苦手な傾向があります。例えば「氷のように冷たい人」や「満開の花のような笑顔」等の表現です。子どもたちは文字通りに言葉を受け取ってしまうため、理解に苦しみ、ストレスになり、混乱してしまう恐れがあります。
普段の生活でコミュニケーションを取るときは、曖昧な表現を使うと混乱してしまう場合もあるので、具体的な単語を選んで直接的な表現を使うようにしてください。例えば「きちんと片付けなさい」ではなく、「ベッドの上にある服はハンガーにかけておいてね」と具体的な言葉で表現します。「きちんと」「しっかり」「ちゃんと」は親が中学生や高校生につい使ってしまう曖昧な表現です。どのような状態を指すのか、そのためには何をしてもらえばいいのか具体的に伝えることを意識する必要があります。
言動に一貫性を持たせる
話す内容や行動に一貫性を持たせることも大切です。伝えるときは論理的に話すことを意識してください。話の流れが予測できるので、発達障害の子どもにとって安心感につながります。例えば「もうお兄ちゃんなんだから自分でできるでしょ」ではなく、「朝、自分で起きて制服に着替えてね」のように、結論から話し、何をすれば良いかをわかるように伝えることです。コツは要点を絞る、時間やテーマを決める、箇条書きにする等で見通しが持てるようにします。
また、一日の行動もルールを守ったり、ルーティンを一定にしたりして言動に矛盾がないようにすることが重要です。そうすることで環境や周囲の人たちの反応が予測しやすくなるので、混乱せず安心して行動できるようになります。特に最初に決めた内容とまったく反対のことを後から補足するような、ダブルバインドと呼ばれる二重拘束にならないように注意してください。例えば「今日あった出来事を話してね」と言っておきながら「忙しいからまた明日ね」のように場当たり的に対応することです。
お願いは簡潔でわかりやすくする
一度にいくつものお願いを入れてしまうと、発達障害の子どもは理解しづらくなります。宿題や部屋の片付け、明日の持ち物の準備等いくつかやらなければならないことがあるときは、1度に1つの指示や内容にして簡潔に伝えるようにしてください。宿題を先に済ませる必要があれば、「まず、宿題を済ませてね」と1つの指示を出し、終わったら次の指示を伝えます。子どもにお願いしたいことがあるときは、「一時一事の原則」を頭に入れておくようにしてください。
注意したいのは「一時一事の原則」を守って1つのお願いをしているつもりでも、複数のお願いが隠れているケースがあることです。例えば帰宅した子どもに「カバンを置いて夕食を食べなさい」といった場合、手を洗ってカバンを部屋に置き、制服を私服に着替えて食卓に着き、夕食を食べるまでには、いくつもの指示が隠れています。簡潔にわかりやすくワンフレーズで伝えたつもりでも、指示の意味が2つ以上になっていないか注意してください。
話しかけるタイミングに気を付ける
大人は自身のタイミングを優先して子どもに接しがちですが、発達障害の子どもは集中している状態を邪魔されると困惑し、イライラし始めることがあります。ゲームに熱中している最中に「すぐに止めなさい」「早く宿題しなさい」と一方的に叱っていませんか?発達障害の子どもに話しかける場合は、ご自身のタイミングではなく、相手を優先し、子どもの状態を確認してから話しかけます。
遊びに夢中になっている場合は音楽を聴く等、徐々に静かな遊びに誘導し、落ち着かせるのも1つの方法です。また、機嫌が悪かったり、怒ったりしている場合は情緒が安定し、様子が少し落ち着いてから接するようにしてください。子どもがリラックスしているか、注意散漫になっていないかを確認し、コミュニケーションの適切なタイミングを見極めます。
穏やかなトーンで話しかける
発達障害の子どもに話しかけるときは、穏やかなトーンで静かに明確な言葉遣いで話すことを心がけます。興奮した状態で大声を出したり、厳しい言葉遣いをしたりしても子どもは不安になるだけで、コミュニケーションがうまく取れません。感情的になってしまうと発達障害の子どもは混乱してしまい、こちらが伝えたいメッセージの本質を誤って受け取る恐れがあります。
発達障害の子どもとのコミュニケーションの基本として知られているのは、Calm(穏やかに)、Close(近づいて)、Quiet(静かに)の頭文字を取った「CCQ」です。子どもに確実に伝えたいのであれば、近づいて目を合わせ、穏やかに伝えるようにします。コミュニケーションの大前提として覚えておきましょう。
本人の気持ちを否定せず受け入れる
発達障害の子どもが感情を表現しているときは理解する姿勢が大切です。ある行動を取ることを嫌がっているとします。その場合もその気持ちを否定せず、「嫌なんだね」と肯定してあげることが大切です。まず子どもの感情を受け入れ、認めてあげると、信頼関係を築けます。その上で、なぜその行動を取った方が良いのか、意味やメリットをきちんと伝えるようにしてください。
例えば長時間のゲームを止めさせたい場合、「止めたくない」と拒否したとき、「ゲームは楽しいよね。でも長時間続けたら、目が悪くなるし、首も疲れて姿勢も悪くなるよ。体に悪いから一日のゲーム時間を決めるようにしようか?」と意味と目的を伝えます。この場合は子どもの問題行動を理解できるように説明し、納得してもらうことも大切です。
変更があったときは丁寧に説明する
発達障害の子どもは急な予定変更が苦手な傾向があり、見通しが立っていないと強い不安を感じやすくなります。中には癇癪を起こしたり、パニックになってしまったりするケースもあるほどです。もし変更することが事前にわかっていれば、なるべく早い段階で本人に伝えるようにしてください。前もって予定表やカレンダー、スケジュール表等を作成しておいて、随時確認できるようにしておくと安心です。
予定が変更になったときは、それを見せながら、なぜ予定が変更になったのか理由も説明すると理解してもらいやすくなります。例えば場所や時間、参加者の顔ぶれが変わる等、いつもと違う状況になる場合は、事前にイメージが持てるようにしてあげることです。
本人の注意を引いてから伝える
発達障害の子どもに話しかけたり、何かを伝えたりしたいときは、本人の注意を引いてから行うようにするのが大切です。相手の視界に入らない場所から話しかけても、耳に入らないケースが多く見られます。先に挙げた「CCQ」でも説明しましたが、まずは相手の視界に入って近づいて目を合わせて話しかけることです。
または名前を呼んだり、軽く肩に触れたりして注意を引いてから話を始めると、こちらの話に集中してもらいやすくなります。名前を呼ぶだけだと何の用事なのか伝わりません。何をして欲しいのか用件も併せて伝えてください。
ポジティブな言葉遣いを心がける
発達障害の子どもはできないことに注目が集まり、日常生活で叱られることが多いため、自己肯定感が低くなりがちです。そのため、子どもと接するときは否定的な言葉よりもポジティブな言葉遣いを意識するようにしてください。努力したことや成果だけでなく、途中のプロセスも認めて「頑張ってるね」「偉い偉い」「その調子だよ」と肯定してあげると自己肯定感が高まり、積極的な行動につながります。
注意するときも否定的な言葉ではなく、ポジティブな表現に言い換えるようにしてください。つい「〇〇しちゃダメ」と命令口調になりがちですが、否定的な表現ではなく「◎◎してね」と、こうして欲しいことを伝えるようにします。積極的に挑戦して失敗したときも、「またやり直せばいいよ」「何度でもできるからね」と失敗を肯定的にとらえて伝えることです。
行動の直後に指摘または褒める
発達障害の子どもが言動や行動を起こしたら、その直後に褒めたり、指摘したりすることが大切です。時間が空いてしまうと何について褒められたのか、または注意されたのかわからなくなり、行動した記憶が薄れてしまうことがあるので、タイムリーに伝えるようにしましょう。直後に褒められたり、注意されたりすることで、子どもは自身の行動と結果を直接結び付け、理解しやすくなります。
部屋の片付けや食器の後片付け等、再びその行動をして欲しいときは3秒以内に褒めると行動の定着効果が高いと言われています。褒めるときは笑顔やハイタッチ等、動作も加えると褒めていることがより伝わり、印象付けられます。
視覚的な情報を加えて説明する
人は外からの刺激を見たり聞いたりすることで、刺激に対応し、日々適切に処理しています。見る、聞く等、どの方法で刺激に対応することが得意かを示すものを認知特性と呼びます。これは誰にでもあるものですが、発達障害の子どもは特にその傾向が強いのが特徴です。視覚で対応しやすい子どもの場合、言葉で説明されるよりも、絵を使ったカードや表、図面の方が理解しやすい場合があります。写真や絵が添えてあると、指示や情報を伝えやすくなるケースが少なくありません。
発達障害の特徴によっても接し方の注意点は異なる
ひと口に発達障害といっても、特徴によって接し方の注意点は異なります。発達障害で代表的なものに挙げられるASD(自閉スペクトラム症)、LD(学習障害)、ADHD(注意欠如・多動性障害)の3つを取り上げ、それぞれの特徴と接し方の注意点を解説します。
ASD(自閉スペクトラム症)の場合
ASD(自閉スペクトラム症)は社会生活や人間関係を築くことが難しい特徴があります。コミュニケーションが一方的でうまく人とかかわれず、好きなものや特定のものにこだわり、環境の変化やルール変更への適応がしづらいのも特徴です。ASD(自閉スペクトラム症)の子どもと接するときは、その特徴を理解し、本人が落ち着ける環境を用意しましょう。スケジュールや手順は文字や絵、写真を使い、視覚的に流れが一覧で見られるようにすると安心します。
LD(学習障害)の場合
LD(学習障害)は一般的な知的発達に遅れはなくても、読み書きや計算等、特定の学習の技能に遅れが見られる状態を言います。文字を読むことに困難がある場合は読字障害、文字を書くことが難しい場合は書字障害、計算や数の理解に困難がある場合は算数障害です。子どもによって苦手なことが違っているため、まずは何が苦手なのか周囲が理解するようにします。読むことが苦手なら、ひらがな1文字の読みから始めて徐々に単語や語句と文字数を増やし、文章を読めるようにするのがおすすめです。書くことが苦手なら、なぞり書きで練習して模写をする方法があります。計算が苦手なら、少ない問題をゆっくり丁寧に解く練習をすると効果的です。
ADHD(注意欠如・多動性障害)の場合
ADHD(注意欠如・多動性障害)は話を集中して聴けない、体を絶えず動かす、順番が待てない等の特徴が見られます。ADHD(注意欠如・多動性障害)の子どもと接するときは長く説明するより簡潔に具体的に伝えることが大切です。本人が守れる約束を設定し、できたらご褒美を与えると達成感を得やすくなります。じっとしなければいけないときは、小休止を入れたり、体を動かす役割を持たせたり、動ける時間のメリハリをつけると効果的です。
2つ以上の特性を持っている場合
発達障害の子どもによっては2つ以上の特徴を持っている場合もあります。例えばASD(自閉スペクトラム症)とLD(学習障害)の特徴を持っている子どもに接する場合は文字や数字を読ませるより、写真や図を使った視覚的なサポートが必要です。
発達障害のある子ども(中学生・高校生)への接し方はよく考えよう
発達障害の中学生・高校生は他人とのコミュニケーションや関係づくりが苦手です。接し方に注意しないと本人は周囲との違いに悩み、うまく行かないことでストレスを感じ、悪くすると精神疾患を発症する恐れもあります。発達障害の種類や程度は子どもによって様々なので、その子に合った接し方や生活の仕方を工夫することが大切です。
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まとめ
発達障害のある子ども(中学生・高校生)への家族の接し方では基本的なコミュニケーションのコツを押さえることが大切です。具体的で簡潔にわかりやすい言葉を使い、言動に一貫性を持たせること、話しかけるときはタイミングを見て本人の注意を引き、穏やかなトーンでポジティブな言葉を使って話すように心がけるようにしましょう。障害の特徴によって接し方の注意点は異なります。
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