
発達障害は遺伝する?調べる方法や相談できる窓口を紹介
ご自身や子どもに発達障害がある方は、「発達障害は遺伝するのか」と気になっていませんか?
特に第一子に発達障害の診断を受けていたら、次に生まれてくる子どもへの影響が心配になると思います。結論をお伝えすると、必ず遺伝するわけではありませんが否定もできません。発達障害と遺伝の関係性を心配されている方に、発達障害が遺伝する確率や発達障害があるかどうかを調べる方法等について詳しく解説します。
発達障害の可能性があるときに相談できる窓口もいくつかご紹介しますので、気になっている方は参考にしてください。
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適切に公共の相談窓口や支援機関を利用する・頼ることで、悩みや困りごとが解決する一歩になるかもしれません。ひとりで考え込まず、誰かに相談してみませんか?
発達障害と遺伝の関係性
「発達障害が遺伝するとしたら」と心配されている方は、まず親や兄弟姉妹からの影響が気になると思います。親や兄弟姉妹からの遺伝の可能性と、発達障害は子育てが原因という説、遺伝以外にどのような原因が考えられるかについて詳しく解説します。
発達障害は父親・母親から遺伝する?
発達障害は、生まれつき脳の機能に障害があることによって発症するとされています。原因は脳機能にあることは医学的に認められていますが、脳の機能に障害が現れる原因についてはまだ解明されていません。
発達障害の中で発症数が多いASD(自閉スペクトラム症)は、遺伝子の関連性がいくつか報告されていますが、環境要因の複雑な影響もあり、完全に特定できていないのが現状です。現代医学では、発達障害は遺伝要因に様々な条件が加わり、複雑に重なりあって発症しているというのが最も有力な説だととらえてください。
また、発達障害を発症する遺伝子は多くの人が先天的に持ち合わせているという説もあります。例えばADHD(注意欠如・多動性障害)の症状は多くの幼児に見られる特徴です。その後、成長するにつれ、衝動性は抑えられていきますが、それが抑えられないと発達障害があるという見方です。
この見方に立つと発達障害の遺伝子がある・ないの区別ではなく、特徴が強い・弱いという考え方になります。
ご自身や配偶者に発達障害がある、またはすでに発達障害の子どもがいる場合、新しく生まれてくる子どもに発達障害があるかもしれないと心配されているかもしれません。発達障害の親から100%発達障害の子どもが生まれるわけではなく、親が健常でも子どもに発達障害があるケースは少なくありません。遺伝子以外の要因も影響しているため、「必ず遺伝する」「遺伝しない」のどちらとも言えないのが実情です。
兄弟姉妹が発達障害だとどうなる?
兄弟姉妹に発達障害があると、他の兄弟姉妹も発達障害になるのか気になるところだと思います。兄弟姉妹全員が発達障害というケースもありますが、一人だけ発症するケースも少なくありません。発達障害の兄弟姉妹への影響は明確な数値で明らかになってはいませんが、双生児の研究データはあります。一卵性双生児の一人が発達障害の場合、もう一人も発達障害を発症する確率が高まるという研究結果です。
二卵性双生児の場合と比較すると約7~8倍高まるとされていますが、発達障害の特徴や条件の違いで、数値が多少変動します。ASDの場合、男児の一卵性双生児は二卵性双生児より2倍以上、発達障害の発症が見られたという研究データがあります。これらの研究結果は一例ですが、一卵性双生児は二卵性双生児より発達障害の遺伝要因が高いと言えるかもしれません。
双生児は同じ環境で育つことから、一卵性と二卵性で発達障害の影響度が違うとなると、環境要因より遺伝要因が大きいと考えられています。しかし、双子や兄弟姉妹でも必ず発達障害の影響を受けるわけではありません。先に述べたとおり、発達障害は遺伝要因に様々な条件が加わり、複雑に重なりあって発症しているという説が有力です。発達障害の原因のみに注目するのではなく、それぞれの子どもの特徴に合ったかかわり方を見つけていくことが大切だと思われます。
発達障害の原因は子育て?
インターネットや口コミ情報では、発達障害は子育てが原因と言われることがあり、親のしつけや愛情不足、努力不足が原因だと誤解している方がいます。さらに誤解している情報に影響を受けて、不安になっている方が少なくありません。
しかし、現段階で発達障害の原因は医学的に解明されていません。障害の原因として考えられるのは遺伝子との関連性、妊娠中の状態、出産時のトラブル等と言われていますが、子育てが原因だという根拠はなく、明確に否定されています。
発達障害は遺伝以外の要素もある?
発達障害は、遺伝要因の他に環境要因の可能性が指摘されています。環境要因の「環境」とはお母さんのお腹の中にいる胎児のときに、食事や運動、ストレス等、外から受けた刺激のことです。具体的には妊娠中の食事、使用・服用した薬剤、公害の影響、出産時の合併症等のトラブルがあります。
妊娠中の食事は、胎児の健康や脳の発達に影響を与えます。脂質や糖質が多い加工食品や甘いお菓子等を多く摂り、肉や魚等のたんぱく質が十分に摂れないような不健康な食事だと栄養バランスが悪くなり、胎児の脳の発達に影響を与える恐れが高くなります。
魚介類に含まれる水銀や野菜の農薬・殺虫剤の成分、PM2.5等の大気汚染物質も蓄積されると影響を及ぼす恐れがあります。他に、妊娠35週未満で生まれた低体重児や未熟児、出産時に子宮筋腫や他の病気を発症する合併症が起きた場合も発達障害のリスクが高いと言われています。ただし、発達障害の遺伝以外の要因について医学的に明確な関係性が明らかになったわけではありません。
発達障害が遺伝する確率
発達障害のある親から子どもに遺伝する確率は、現在わかっていません。先に述べた通り、発達障害は遺伝要因だけでなく、環境要因のような他の条件が複雑に絡みあって発症するのではないかと言われています。親に発達障害があっても、子どもに発達障害があるとは限りません。両親ともに健常者であっても、発達障害のある子どもが生まれることがあります。
発達障害の親から生まれた発達障害の子どもの確率も、調査結果によって数値が違っており、明確な確率が存在しません。偶然の要素も重なっている可能性があります。この結果からしても遺伝要因と環境要因が相互に影響しあい、複雑化しているため、偶然性に左右される面があるということです。
発達障害かどうかを調べる方法はある?
発達障害の原因が医学的に特定できないとしたら、出生前や子どものときに発達障害かどうかを調べる方法はあるのか気になるところだと思います。出生前と子どもの診断について解説します。
遺伝子検査キットや出生前診断では調べられない
妊娠32週目までは出生前診断を受けられますが、調べられるのはダウン症等の染色体異常による疾患です。一方、発達障害は羊水検査やエコー写真、遺伝子検査等の出生前診断では判断できません。子どもの細胞を採取して遺伝子を調べるという遺伝子検査キットが販売されていますが、遺伝子検査を含め、出生前診断では発達障害の有無はわかりません。あくまで「遺伝的リスクがあるか」を調べるだけという点に注意が必要です。
発達障害かを調べるには医師の診断が必要になる
発達障害は、専門医のいる病院で診断する必要があります。子どもと大人では、診療科の種類が異なります。大人は精神科や心療内科ですが、子どもの場合は小児科、児童精神科、児童神経科を受診します。または総合病院の発達障害外来でも診断は可能です。一般的には幼児から中学生ぐらいまでの間に「発達障害の傾向があるのではないか?」と感じる何らかの特徴が見られ、それがきっかけで診断を受けるパターンが多く見られます。
診断は子どもだけでなく、親や関係者へのヒアリング、行動観察、心理検査や知能検査等の各種検査を行い、それらの結果を踏まえて総合的に判断されます。MRIで脳の診断をする場合もあり、診察は複数回行って最終的な診断をするのが一般的です。発達障害は、周囲は気付かず、本人だけが気にしており、医療機関を受診しても診断が下りないパターンも見られます。気になるようであれば、セルフチェックを活用する、または医療機関への相談を検討してみましょう。
発達障害の可能性があるときに相談できる窓口
子どもの発達障害が気になる場合は、なるべく早めに発達相談を受けることをおすすめします。その子どもの特徴に合った支援を早期に開始できるので、不登校や引きこもり、不安やストレス等の精神症状を防ぐことが可能です。相談できる窓口をご紹介します。
かかりつけ医
- 発達障害の専門医療機関は少なく、待たされるのが一般的
- 不安を抱えて待つより、かかりつけ医や小児科医に相談してみる
子どもに発達障害の特徴が見られるときは、まずかかりつけ医に相談する方法があります。専門の医療機関が少ないため、予約しても数ヵ月先というのが一般的です。何ヵ月も親子で不安に過ごすより、かかりつけ医や小児科医に相談することをおすすめします。
自治体の福祉課
- 住んでいる自治体の福祉課に相談する
- 自治体によって相談できる医療機関リストを作成している
無料で相談できる自治体の福祉課や市区町村の保健センター、児童相談所があります。自治体によっては福祉課や保健センターで相談できる専門の医療機関リストを作成している場合があり、必要に応じて紹介してもらえるケースもあります。
発達障害者支援センター
- 発達障害者への総合的なサポートを行う支援センター
- 各都道府県に設置されている
- サポート内容は地域により異なるため問い合わせる
子どもを含め、発達障害者とその家族を地域で総合的にサポートしているのが、発達障害者支援センターです。各都道府県に設置され、都道府県や指定都市、または都道府県知事等が指定した社会福祉法人や特定非営利法人が運営しています。
まとめ
発達障害は、遺伝要因に環境要因等、様々な条件が加わり、複雑に重なりあって発症しているという説が有力です。発達障害の有無は遺伝子検査キットでは調べられず、専門医の診断を受ける必要があります。子どもの発達障害が気になる方は、かかりつけの病院や最寄りの小児科へ相談してみるとよいでしょう。もしくは自治体の福祉課、各都道府県の発達障害者支援センターでも相談は可能です。インターネット等で調べた情報だけで決めつけるのではなく、専門機関や相談窓口を有効に使うことも検討してみてください。
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