
発達障害のある方が疲れやすいのはなぜ?
主な原因と改善するための対策
発達障害のある方は、他の人に比べて疲れやすいと感じることが多いようです。慢性的な疲労は日々の活力を奪い、消極的な気持ちにさせてしまいます。この状況を改善するにはどうしたらいいのでしょうか。
問題を解決するための第一歩は、その原因を知ることです。そこで本記事では、発達障害のある方はなぜ疲れやすいのか、その主な理由を解説します。また、その原因それぞれに対して有効なアプローチの仕方もご紹介します。ご自身に合った生活スタイルを見つけ、日々の疲れを減らすために役立ててください。
発達障害のある方が疲れやすいのはなぜ?主な原因は?
発達障害のある方にとって、疲れやすさは日常生活における大きな悩みのひとつです。この疲れを改善するには、疲れやすい原因がどこにあるのかを特定することから始めるのが大切です。そこで以下では、発達障害のある方を疲れやすくさせる主な原因を5つ解説します。
1.周囲に合わせるために無理をしているから
発達障害のある方は、周囲の人とは異なる特徴を持っており、周囲の人に合わせるのに苦労しがちです。例えば、ADHD(注意欠如・多動性障害)の方は、じっとしていることが苦手で、衝動的な行動や発言をしてしまうことがあります。また、ASD(自閉スペクトラム症)の方は、曖昧なやりとりの多い対人コミュニケーションが不得手です。
発達障害のある方は、こうした特徴を持ちつつも、無理して周囲に合わせていることが少なくありません。例えばASD(自閉スペクトラム症)の方の中には、周囲の状況や人の言動を細かく分析し、その場に適した行動を取ろうとする方がいます。このような振る舞いは、見た目には「普通に」しているように見えても、本人にとっては大変なエネルギーを消耗することです。このように、自分の特徴に反する行動を無理に続けることが、疲れの一因となっている可能性があります。
2.感覚が過敏だから
感覚の過敏さもまた、発達障害のある方が疲れやすい理由と言えます。具体的には、光、音、匂い、肌触り等、五感のどれかまたは複数が過敏な状態になりやすいという特徴があります。例えば、蛍光灯の光や教室のざわめき、駅のアナウンスのように、他の人にとっては何気ない刺激が、発達障害の方にとっては我慢できない刺激になることが少なくありません。香水や食品の匂い、時計の音、服の肌触り等も同様です。
ご自身の部屋ならまだしも、学校や街中にいるときにこういった刺激をシャットアウトするのは簡単ではありません。そのため、発達障害のある方は特に何もしていなくても、感覚刺激によって疲れてしまうことがよくあります。
3.学校や仕事での作業に集中しすぎてしまうから
発達障害のある方の中には、特定の仕事や作業へ過剰に集中してしまう「過集中」という特徴が見られる場合があります。この状態は、特にASD(自閉スペクトラム症)の特徴として知られているものです。
過集中になると、時間の経過や寝食を忘れてしまうほど熱中することがあり、ときには大きな成果を生むこともあります。しかし、この一時的な集中力の高さは、同時にエネルギーを大きく消耗するものです。好きなことに没頭している場合、その最中は疲れを感じないかもしれませんが、集中が途切れた瞬間にどっと疲労感が押し寄せることがあります。知らず知らずのうちに無理を重ねていないか注意が必要です。
4.身体をうまく動かせないから
身体を動かすのが苦手なせいで疲れやすい方もいます。非常に不器用であったり、力加減をコントロールするのが不得手であったりすると、他の人が何気なくしている日常動作も困難になりがちです。例えば、靴ひもを結ぶのを困難に感じたり、強く歯磨きしすぎて出血したり、電車のつり革を必要以上に強く握って手が疲れてしまうといったことも多く見られます。
また、ADHD(注意欠如・多動性障害)の方は、単純に活動量が多すぎて疲れることがあるようです。活発に動き回ったり、思考が目まぐるしく駆け巡ったりしていると、自然と他の人より疲れやすくなってしまいます。
5.睡眠をコントロールしにくいから
ADHD(注意欠如・多動性障害)を中心に、発達障害のある方は睡眠に問題を抱えていることも珍しくありません。これは単になかなか睡眠時間が足りない場合だけでなく、逆に長く寝すぎてしまう、睡眠のリズムが整わない等、人によって様々な形で現れます。ADHD(注意欠如・多動性障害)でなくても、不安やストレス、感覚過敏のせいで寝付けないといったことも多いはずです。
睡眠のコントロールがうまくいかないと、日中に十分なエネルギーを得ることが難しくなり、さらに疲れを感じやすくなります。睡眠の問題は生活全般に影響を及ぼすため、疲労の原因として見過ごせない要素です。
発達障害のある方の「疲れやすい」は改善できる?対策は?
発達障害のある方が感じる「疲れやすさ」は、その原因を理解し、適切な対策を取ることで改善が期待できます。自分の特徴に合った生活スタイルや工夫を取り入れることで、少しずつ負担を軽減することが可能です。ここでは、そのための具体的な対策として、以下の手段をご紹介します。
- 周囲に合わせすぎない
- 刺激を減らす工夫をしてみる
- 意識的に休憩を取り入れる
- 苦手な動作を減らしてみる
- 眠りやすい環境を整える
周囲に合わせすぎない
周囲に合わせることを過剰に意識してしまうと、心身に大きな負担がかかり、疲れやすくなります。そのため、できるだけ自分が周囲に合わせずに済む環境を整えることが大切です。
立派な社会人になるためには、周囲に馴染み、社交性を身に付ける必要があると思うかもしれません。しかし、今は特技を生かしてフリーランスで働いたり、リモートワークで働いたりする人も増えています。勉強にしても、通信教育等でカバーできる範囲は多いはずです。あまり社会通念を気にしすぎず、自分が快適に暮らしやすい環境はどのようなものか考えて、ライフスタイルをデザインしていきましょう。
もし環境をすぐに変えることが難しい場合は、一人になれる時間を意識的に多くとることも大切です。また、周囲に合わせる必要のある範囲(自分の役割や責任の範囲)を明確にすることで、必要以上に周囲に合わせる負担を軽減できます。
刺激を減らす工夫をしてみる
感覚過敏によって疲れやすい場合は、自分が過敏に感じやすい刺激を緩和するような工夫をすることが大切です。例えば、音に敏感なのであれば耳栓やノイズキャンセリング機能付きのイヤホンが役立ちます。
視覚が敏感な場合はサングラスを使用したり、作業空間自体を整理して、必要な物だけが視界に入るようにしたりするのがおすすめです。服の肌触りや締め付けが気になる方は、どのような素材やデザインなら気にならないか特定し、それに沿って服選びをしましょう。
感覚過敏に役立つグッズは市販のものでも数多くあります。また、カーテンを遮光性の強い種類に変えたり、家電を静音性の高いものに変えたりすることで刺激が緩和されることもあります。
意識的に休憩を取り入れる
過集中や活動過多によって疲れやすい場合は、休憩を意識的に取り入れる工夫が必要です。「疲れを感じたら休憩する」という方法では、疲れに気付かず休めない可能性があるので、休憩時間もあらかじめタスクに組み込んでおき、きちんと休憩できるような工夫をしましょう。
例えば、スマートフォンや時計等でアラームを設定しておけば、一定時間ごとに休憩を挟みやすくなります。また、休憩は時間だけでなく、質も大切です。散歩やストレッチをしたり、好きな音楽を聴いたりと、ご自身がリラックスしやすい事柄を休憩時間に取り入れましょう。適度に休憩を取り入れることで、結果的に長期的な作業効率が上がることも期待できます。
苦手な動作を減らしてみる
身体を動かすのが苦手な場合は、日常生活の中で苦手な動作を減らす工夫をしてみるのがおすすめです。例えば、靴ひもを結ぶのが苦手だという場合、そもそもひもがないタイプの靴を買う等が考えられます。同様に、「ボタンが多い服は避ける」「料理はあらかじめカットされた食材を使う」等、日常のちょっとした工夫が大きな助けとなります。
その他では、「早起きして、座れる時間に電車に乗る」「人通りの多い道は避ける」といった工夫も効果的です。いずれにしても、こうした工夫をする際には、事前に自分がどのような動作を苦手にしているのか特定しておくことが大切です。
眠りやすい環境を整える
睡眠に問題を抱えている場合は、眠りやすい環境を整えてみましょう。眠りやすい環境は、人それぞれです。自分がリラックスして寝床に入りやすい環境や生活リズムを色々と試行錯誤してみてください。
一般的に眠りやすくする方法としては、「室温を快適な温度に調整する」「部屋を暗くする」等が挙げられます。外の光が気になって眠れない場合は、遮光カーテンを使うようにしましょう。また、就寝前にストレッチをして身体をほぐしたり、軽くシャワーを浴びたりすることで眠りやすくなる人もいます。「眠る前にはこうする」というルーティンを確立すると、それを実行することで身体が勝手に眠る準備をするようになる効果が期待できます。
生活に支障が出る場合は病院で相談する
眠りやすい環境を整える工夫を試しても、依然として睡眠がうまく取れず、生活に大きな支障が出る場合は、病院への相談を検討してください。うまく眠れない状態が続くとますます疲れやすくなり、日常生活や学業に悪影響が出やすくなります。医師に相談すれば、状況に応じて睡眠薬を処方してもらえます。また、心の悩み等が不眠の原因の場合は、カウンセリングを利用することで状況が改善することもあります。困ったときには医療機関の力を借りることをためらわないでください。
まとめ
発達障害のある方が疲れやすい理由は、「無理して周囲に合わせているから」「感覚が過敏だから」「過集中だから」等々、多種多様です。これらには発達障害の特徴が大きく関係しています。疲れやすさを緩和するためには、自分が何に疲れやすいのかを正確に把握したうえで、それに応じた対策を取ることが大切です。ちょっとした工夫や便利なアイテムを日常生活に取り入れることで、心身のストレスは改善されるはずです。それでも状況が良くならない場合は、一人で抱え込まず、周囲の人や医師等にも頼り、一緒に解決策を考えてもらいましょう。
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