
発達障害のある方の就職活動|うまくいかないと感じる理由や失敗しないためのコツ
就職活動を控えて、「うまくできるだろうか」と不安を感じている方も多いのではないでしょうか。特に発達障害のある方にとって、就職活動は面接でのコミュニケーションや多忙な環境への適応が大きな課題になることがあります。
本記事では、こうした課題を解決するための具体的な方法や、成功するためのコツを解説します。また、就労移行支援事業所などの利用できるサポートについても紹介し、安心して就活に取り組むための情報をお届けするので、ぜひ最後までご覧ください。
発達障害のある方が就職活動で「うまくいかない」と感じる主な理由は?
不安や悩みへ対処するための第一歩は、「何に困っているのか」をはっきりさせることです。以下では、就職活動で発達障害のある方が「うまくいかない」と感じやすいポイントを解説します。
自分の強みや特徴をうまく伝えられないから
就職活動では、応募先の企業へご自身の強みをアピールしなければなりません。しかし、発達障害のある方は、対人コミュニケーションを苦手と感じる方が少なくありません。自己アピールをうまく伝えるために、事前に自己分析をしっかり行い、ご自身の強みや弱み、障害の特徴など、面接で伝えるべき内容をあらかじめ整理して、うまく伝えられるよう準備しておきましょう。
また自己分析を試みても、過去の失敗経験から自己肯定感が低く、ご自身の強みが見つけられない場合もあります。このようにご自身のことをうまく伝えられないもどかしさが、就職活動へのモチベーションを下げ、将来に対して後ろ向きな気持ちを抱いてしまう要因の一つとなってしまうこともあります。
対人コミュニケーションが苦手だから
就職活動では、面接やグループディスカッションなど対人コミュニケーションの機会が数多くあります。発達障害のうち、ASD(自閉症スペクトラム症)の特徴のひとつに、対人コミュニケーションが苦手なことが挙げられます。また、ADHD(注意欠如・多動性障害)の方も、人の話を黙って聞いていることが難しかったり、衝動的に発言してしまったりと、コミュニケーションで苦労することがあるかもしれません。採用基準として、コミュニケーション能力が重視されることが多いため、発達障害のある方が不利に働いてしまう場合があります。
マルチタスクが苦手だから
就職活動では、企業への応募、面接準備、授業、サークル活動、アルバイト等、複数のタスクを同時にこなすことが必要です。例えば、複数の企業に応募するのが一般的な就職活動では、「A社に応募書類を提出し、B社で面接を受ける」といった具合に、スケジュールが複雑化します。発達障害のある方の中には、このようなマルチタスクに対応しきれず、どのタスクも思うように進められなくなることがあります。
発達障害のある方が就活前にやるべきことは?
上記で解説した「うまくいかないこと」は、事前の準備と対策で大きく改善できます。具体的には、入念な「自己分析」「企業研究」「スケジュール管理」が就職活動で成功する大きな鍵です。以下では、それぞれの対策を解説します。
自己分析をして自分の強みを知る
就職活動をはじめる前に、まずは自己分析を行いましょう。その際のポイントとして、ご自身の特徴を強みとして解釈することです。これは発達障害の特徴に関しても例外ではありません。
例えば、ASD(自閉スペクトラム症)の方が持つ「こだわりの強さ」という特徴は、「妥協せずやり抜く力」という強みとしてアピールできます。同様に、ADHD(注意欠如・多動性障害)の方の「衝動性」という特徴も、「行動力がある」という強みとしてポジティブに言い換えることが可能です。このように、ご自身の特徴を強みとして考える視点を持つことで自信を持ち、面接で効果的に自己アピールしやすくなります。
企業の採用枠・サポート体制を事前にリサーチする
自己分析をもとに、ご自身の特徴に適した企業を探すことも重要です。業種・職種や給与面だけでなく、企業の雰囲気や障害へのサポート体制の有無等も含めて、詳細に企業研究をしましょう。
例えば、多様な働き方を推進している企業や、発達障害に対する理解が深い企業を選ぶことで、入社後のストレスを軽減できます。また、ASD(自閉症スペクトラム症)の方であれば、リモートワークを導入している企業ならコミュニケーション面での負担が減るかもしれません。さらに、障害者手帳を所持している場合は、障害者雇用という採用枠を利用すれば、障害への配慮を受けながら働ける環境を整えることも可能です。
企業研究を一人で行うのが大変な場合は、家族や学校、支援機関に相談してみてもよいでしょう。
就職活動の計画を立てる
就職活動をスムーズに進めるためには、計画的なスケジュール管理が欠かせません。特に、マルチタスクに苦手意識がある場合は、優先順位を明確にして取り組むことでストレスを軽減できます。
まずはタスクを細分化し、それぞれの締め切りや優先順位を明確にしましょう。そしてエントリーシートの提出日や面接日程を手帳やアプリに記録しておくことで、対応漏れなどを防げます。大学の授業やアルバイトの予定なども一括して管理しておくのがおすすめです。面接の準備などをする際はスケジュールをチェックし、残り日数を逆算して取り組むようにしましょう。
就活にふさわしい身だしなみは?
就職活動で成功するには、見た目の印象も大切です。以下では、企業の採用担当者に好印象を与える身だしなみのポイントを男女別にご紹介します。

男性の身だしなみ
男性は基本的にリクルートスーツを着て就職活動に臨みます。各部分で注意したいポイントは以下の通りです。
- スーツ
- 紺またはグレーの身体にフィットしたスーツを選びます。肩幅や袖丈が適切でないスーツは、だらしない印象を与えるため注意が必要です。
- シャツとネクタイ
- 清潔感を重視して、白または水色のシャツを選びましょう。ネクタイは奇抜すぎない柄や色を選び、結び目が緩まないようにしましょう。ネクタイの長さはベルトのバックルにかかる程度が適切です。
- スラックス
- スラックスは腰骨の高さまで上げ、ベルトでしっかり止めます。腰骨より低い位置に下げて腰履きするなどは避けて、整った印象を与えましょう。
- 髪型と髭
- 髪型は清潔感を意識し、整髪料は控えめに使用しましょう。過度なヘアカラーは避けて、寝ぐせがついてしまっている場合は直して整えます。また、一般的な企業の場合、髭は剃っておいた方が良いでしょう。
女性の身だしなみ
女性も基本的にはリクルートスーツを着用し、ビジネスシーンに適した服装を意識します。気を付けたいポイントは以下の通りです。
- スーツ
- スカートスーツまたはパンツスーツを選びましょう。色は黒、紺、グレー等のベーシックなものがよいでしょう。
- インナー
- 白や淡い色のブラウスを合わせると清楚な印象を与えられます。派手な色やデザインは控えましょう。ストッキングのカラーはベージュ、厚さは20~30デニールを選ぶと自然な印象を与えられます。なお、ストッキングは予備を持ち歩き、伝線したら履き替えられるように準備しておくとよいでしょう。
- 髪型
- 髪型は顔に髪がかからないように整え、表情が見えるようにおでこを少し出すスタイルが好ましいです。過度なヘアカラーや奇抜な髪型は避けましょう。
男女共通の身だしなみ
男女共通で意識したいポイントは、なるべくシンプルで清潔感のある印象を相手に与えることです。例えば、ネックレスや華美な指輪、イヤリングなどの装飾品は就職活動の場にふさわしくありません。また、リュックやスニーカーなどカジュアルな印象を与えるものも極力避けた方が良いでしょう。カバンやバッグは、黒や紺などシンプルな色で、書類が入り、独立して立つものが適しています。
また、面接会場が狭いこともあるため、匂いにも配慮しましょう。ただし、汗臭さを隠すために強い香りの制汗スプレーや香水を使うと、かえって相手に不快感を与えることがあります。無香料や匂いの控えめなものを使用するのがおすすめです。
発達障害のある方が就活に失敗しないためのコツ
発達障害のある方が就職活動で成功するためには、周囲のサポートを受けながら、早めに計画を立てて動き始めることが大切です。具体的には、以下の点を意識して就職活動に取り組むことをおすすめします。
親族や支援機関のサポートを受ける
発達障害の方が就職活動を成功させるためには、周囲の支援を活用することが重要です。親族や友人に相談し、自己分析や面接準備のアドバイスをもらったり、日程管理や実際のタスクを手伝ってもらったりしましょう。
また、大学の就職課では、発達障害に配慮した求人情報や就職支援を受けられる場合があります。さらに、就労移行支援事業所や地域障害者職業センターなどの専門機関を利用することで、履歴書作成や面接対策のアドバイス、精神的なフォロー等のサポートを受けることが可能です。
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- 大学生でも就労移行支援は利用できる!
就労移行支援は、就職に向けて必要なスキルを身に付けるためのサポートを提供する制度です。大学生が就労移行支援を利用する際の条件や注意点について詳しく解説します。
3年生までに単位をほぼ取り終えておく
就職活動が本格化する前に、卒業に必要な単位をできるだけ取得しておくことも重要です。企業側の採用活動は主に平日に行われるため、授業と日程が重なることを防ぐ準備が必要です。
単純に労力面から見ても、学業と就職活動を両立させるのは簡単ではありません。特に4年次に卒業論文(卒業制作)の提出が必要な場合はなおさらです。いくら内定が得られても、必要な単位を修得できなければ卒業できず、内定を辞退せざるを得なくなります。
そのため、3年次までに必要な単位をほぼ修得し、4年次は週1~2日の通学で済むようなスケジュールを目指すのが理想です。高卒(中卒)や専門学校卒で就職を目指す場合も、卒業の見込みを確実に立てておきましょう。
資格を取得しておく
就職活動で高評価を受ける方法のひとつが、希望する職種に関連した資格を取得しておくことです。資格は知識やスキルを客観的に証明すると同時に、仕事にかける熱意や計画性をアピールする手段です。将来的に転職をする場合も、資格があった方が有利に働きます。
ただし、障害者雇用では、資格よりも「安定して出勤できること」が重視されます。また、特に中途採用では、即戦力が求められるため、資格よりも実務経験が重視される傾向です。それでも、他の条件が同じ場合は資格がプラスに働く可能性があります。
発達障害のある人に向いている職種を探す
内定はゴールではなく、その後には長い職業生活が始まります。入社後に後悔や挫折をしないためには、ご自分の障害の特徴を踏まえて職種を選ぶことが大切です。
例えば、ADHD(注意欠如・多動性障害)の方は一般的に、ケアレスミスが多く、マルチタスクが苦手な傾向があります。そのため、スピードや正確性が求められる仕事は避けた方が良いかもしれません。一方で、ダブルチェックの仕組みがある仕事や、一つひとつ丁寧に進められる業務には向いています。
適正のある職種と、支援体制が整っている企業を選ぶことが、成功につながるポイントです。
発達障害のある方の就活に役に立つ支援機関
発達障害のある方が就職活動を進める際に、専門的な支援を提供する機関を活用することで、よりスムーズに進めることが可能です。以下では、そのような支援機関の中から、就労移行支援事業所と障害者就業・生活支援センターの2つをご紹介します。
就労移行支援事業所
就労移行支援事業所は、障害者総合支援法に基づき、一般企業への就職を目指す方を対象とした支援機関です。ここでは、就職に関する相談、適性評価、履歴書や職務経歴書の作成指導等、就職活動全般の支援を受けられます。対象者は原則18歳から65歳までの障害者や難病をお持ちの方です。
18歳以上で大学・専門学校などに通う学生も就労移行支援を利用できます。ただし、卒業の見込みがある卒業年度の学生であり、大学・専門学校または自治体で就職支援が受けられないなどの条件を満たさなければなりません。利用期間は最長2年間で、その間に必要な支援を受けながら、スキルの習得や就職活動を進められます。また、就職後は最大6か月の就労定着支援を受けられます。就労定着支援とは、就職後に労働環境や仕事の内容に順応し、継続的に働くことを支援してくれるサービスです。
障害者就業・生活支援センター
障害者就業・生活支援センターは、障害者雇用促進法に基づき設置された公的機関です。都道府県が設置し、多くはNPO団体が委託運営しています。ここでは、就業支援と生活支援を組み合わせ、障害者が社会的に自立するための総合的なサポートを提供しています。
就職活動の相談や定着支援に加え、日常生活や地域生活に関する助言を受けることも可能です。これらのサービスは多くの場合、無料で利用できます。
発達障害のある方の就活後に役に立つ経済支援
就職活動に成功しても、体調や環境の変化等によって、一時的または長期的に働けなくなる場合があります。その際、経済的に困らないようにするために、以下の制度を知っておくことが大切です。
傷病手当
傷病手当は、業務外で負った病気やケガで働けなくなった際に一定期間の収入を補う制度です。支給額は基本的に給与の3分の2で、最長1年6ヵ月間受け取れます。ただし、失業保険との同時利用はできません。また、業務が原因で病気やケガをした場合は、傷病手当ではなく労働災害保険が適用されます。
失業保険
失業保険は、雇用保険に一定期間加入していた方が離職した場合に支給される給付金です。支給額は離職前の給与額や離職理由等に応じて変動し、働いていたときの給与の約5~8割程度です。
支給期間も条件によって変わりますが、障害がある方は「就職困難者」として認定されると、支給期間が通常より長くなります。45歳未満の場合は最長300日、45歳以上65歳未満の場合は最長360日間受給できる場合があります。また、一般的には失業手当の受給には2回以上の求職活動実績(仕事探しの実績)が必要ですが、就職困難者の場合は1回の実績で受給要件を満たします。
さらに、自己都合退職の場合、失業保険が支給されるまでには通常3ヵ月間待つ必要がありますが、心身の障害で離職した場合は「特定理由離職者」として認定され、すぐに給付を受け取れる可能性があります。
障害年金
障害年金は、病気やケガ等によって生活や仕事に支障が出た際に受給できる年金制度です。現役世代も対象となり、厚生年金加入者は障害厚生年金、国民年金加入者は障害基礎年金を受け取れます。
ただし、受給には障害者手帳とは別の審査を受けることが必要です。また、障害者手帳と障害年金では等級の基準が異なるので注意してください。
発達障害により生活や仕事に著しい困難がある場合も支給対象となる可能性があるため、選択肢として覚えておくと良いでしょう。場合によっては、働きながらでも年金を受け取れます。
まとめ
学校卒業後の進路は、中学・高校・大学の各ステージによっても、進学か就職かの選択によっても異なります。まずはやりたいこと・できることを明確にし、その次にご自身の希望と個性に合う進路を選ぶことが大切です。
また家族や先生など、身近な人と相談して決めてもよいでしょう。
就職活動中の学生
(高校3年、大学4年生)のみなさんへ
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