
【中高生向け】LD(学習障害)がある方の勉強法|特徴別にサポート例を紹介
LD(学習障害)は、脳の特定の機能に違い があるために、特定分野の学習に難儀する障害です。主な種類として「識字障害」や「書字障害」、「算数障害」が知られています。LD(学習障害)がある子どもの学習を促進するには、その特徴に合わせた勉強法やサポートの提供が重要です。本記事では、LD(学習障害)の基本知識をはじめ、種類の見分け方や効果的な勉強法、周囲のサポートにおける注意点を紹介します。最適な勉強法やサポートのヒントとしてお役立てください。
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LD(学習障害)とは?
「LD(学習障害)」とは、知的発達に遅れが見られないものの、特定分野の学習に難儀する障害のことです。文部科学省では、LD(学習障害)を以下のように定義しています。
「学習障害とは、全般的に知的発達に遅れはないが、『聞く』『話す』『読む』『書く』『計算する』『推論する』等の学習に必要な基礎的な能力のうち、ひとつないし複数の特定の能力についてなかなか習得できなかったり、うまく発揮することができなかったりすることによって、学習上、様々な困難に直面している状態をいいます。」
LD(学習障害)の主な代表例は、文字を読むことが苦手な「読字障害」と文字を書くことが苦手な「書字障害」、そして数字や記号の認識が苦手な「算数障害」です。なお、学習障害の略語である「LD」には、以下のように、分野や考え方によって異なる言葉が割り当てられることがあります。
- 医学分野におけるLD:Learning Disorders
- 教育分野におけるLD:Learning Disabilities
「Disorder」も「Disability」も日本語では「障害」と訳されますが、若干ニュアンスが異なる英語です。Disorderには「(精神的な)不調」という意味合いがありますが、Disabilityは「ハンディキャップ」というニュアンスが強く、福祉の分野でも使われます。また、近年では健常者と同等にせず、学習のアプローチを「変える」という意味を込めて、「Learning Differences」と呼ぶ方もいます。
出典:e-ヘルスネット(厚生労働省)|学習障害(限局性学習症)
幼少期~青年期に表れる特徴
LD(学習障害)がある子どもには、一般的に以下のような特徴が見受けられます。
【青年期(13歳以降~)】
- 英語の読み書きの理解が難しい
- 小学校低学年レベルの漢字の読み書きが難しいことがある
- 数学の文章問題の理解や計算式の適用が難しい
参考
【学童期(5歳以降~13歳くらい)】
- 読み間違えが多い
- 習字等で字のバランスが取れない
- 数字や計算の理解が難しい
- 文章を読む際に行を飛ばしてしまうことがある
参考
【小学校入学前(~5歳くらい)】
- 読み書きを覚えるのが遅い
- 話し方が遅れる
- 手先が不器用であることが多い
LD(学習障害)は、読み書きや計算等の特定分野以外の知的発達に遅れがないため、一般的には小学校入学前に診断されることがあまりありません。しかし、学齢期に入り授業のレベルが高まっていくにつれて、上記のような特徴が見られるようになります。
特に中学校・高校に進学すると、その傾向は一段と高まります。例えば、日本語(国語)の学習より、英語の学習のほうが理解が進まないことが多いです。そのため、学校での英語学習の本格的な導入をきっかけに、LD(学習障害)が明らかになることがあります。また、複雑な問題や抽象的な問題が増えてくる数学に対しても、理解が難しくなりがちです。
学習障害になる原因は?
LD(学習障害)の原因について、詳しいことはまだ明らかになっていません。文部科学省も、「中枢神経系に何らかの機能障害があると推定される」と説明するに留めています。
ただし、直接的原因は何らかの障害や育った環境、育て方ではないとされています。つまり、LD(学習障害)は、家庭環境や親の教育方法に問題があって、引き起こされるものではありません。
また、本人の努力不足や性格的な問題によって起こるものでもないため、この点をよく理解し、自身や家族を責めないようにしましょう。
学習障害の種類とは?3つの特性について解説
前述したように、LD(学習障害)は大きく分けると、「読字障害」「書字障害」「算数障害」の3種類です。それぞれの特徴として、苦手とする学習内容があります。
1. 読字障害(ディスレクシア):文字を読むのが苦手
読字障害(ディスレクシア)は、文字を認識して「読む」行為に難儀する障害を指します。文字の認識や発音との結びつけに苦労し、読解に時間がかかることが多いです。個人差にもよりますが、文字のフォントや形によって、「読める/読めない」が変わるケースもあります。
また、文字が歪んで見えたり、長文を読む際に行を読み飛ばしてしまったりすることもそのひとつです。文字情報を一貫して認識し、内容を理解することが難しく、特に長文の読解には時間や労力を要します。さらに、読字障害は日本語よりも英語(アルファベット)に対して、強く表れる傾向があります。
2. 書字障害(ディスグラフィア):文字を書くのが苦手
書字障害(ディスグラフィア)は、文字を「書く」行為に難儀する障害を指します。書かれている内容を理解したり、頭の中で表現したい内容を考えたりすることはできるものの、文字や文章を書くことが苦手です。
例えば、文字を書く際にバランスを整えることが難しく、文字が不規則になったり、読みづらくなったりします。また、鏡文字を書いてしまうことや、「お」と「む」等の形の似た文字を、正しく使い分けられないこともそのひとつです。他の人が読める文字を書くことには苦労しますが、パソコンのタイピングは可能な場合があります。
3. 算数障害(ディスカリキュリア):数字・記号の認識が苦手
算数障害(ディスカリキュリア)は、数の概念や数字、記号の認識に難儀する障害です。例えば、「簡単な計算ができない」「九九を暗記できない」「図形の認識が難しい」等の場合も、算数障害に該当する可能性があります。
また、算数(数学)の問題を解く際に、「数の大小の区別がつかない」「繰り上がりや繰り下がりの理解が難しい」と苦労することも少なくありません。算数障害の現れ方は個人差が大きく、中学校に入ってから障害の存在が明らかになる場合もあります。
学習障害がある方(中学生・高校生)の勉強法とは?特徴別のサポート例を紹介
LD(学習障害)がある方は、勉強について特有の困難に直面することが多いです。この問題に対処するには、障害の特徴に合わせた勉強法やサポート策が求められます。
読字障害がある方(中学生・高校生)の場合は?
読字障害がある方は文字の形の認識が難しいため、まずは以下のような文字を認識しやすくする工夫から始めると良いです。
- 【文字を拡大する】
- テキストを拡大コピーしたり、デジタルのテキストを使って文字サイズを大きくしたりすることで、文字を認識しやすくなります。
- 【読む部分以外を隠す】
- 読む部分をわかりやすくするために、定規や紙などを使って読む部分以外を隠せば、文章を視線で追いやすくなります。
- 【色付きの文字を使う】
- 重要な部分を色付きの文字に変更することで、視認性を高められます。
- 【読みやすいフォントを見つける】
- 文字が読みやすいフォントや、そのフォントで書かれたテキストを探すことも有効です。電子書籍なら、同じテキストでもフォントを変えられる場合があります。
文字を読むことが極めて困難な場合は、文字で勉強することにこだわりすぎず、耳から覚えることも検討しましょう。例えば、「授業を録音して何度も聞き直す」「音声読み上げソフトにテキストを読んでもらう」等の方法が考えられます。
書字障害がある方(中学生・高校生)の場合は?
書字障害の現れ方は多種多様ですが、まずは「何に困っているか」「何が苦手か」を把握し、それぞれの問題に応じた勉強やサポートを行うことが重要です。具体的に、以下のような対策例が挙げられます。
- 【単に文字を書くのが苦手な場合】
- 鉛筆やペンではなく、指で文字をなぞる等の反復練習により覚えやすくなることもあります。
- 【文字の認識が苦手な場合】
- 文字と関連するイラストを使いつつ、反復練習をすると効果的です。「文字と絵」あるいは「文字と音(読み方)」等を関連付けることで覚えやすくなります。
- 【漢字が苦手な場合】
- 「へん」と「つくり」を組み合わせて、ひとつの漢字を作るブロックやカード等の活用がおすすめです。
- 【習字が苦手な場合】
- 大きいマスに手本の薄い文字をなぞらせて、文字を書く練習をすることで、文字の形やバランスを身に付けやすくなります。
上記はいずれも文字を書く練習ですが、手書きの勉強にこだわりすぎず、発想を変えることも大切です。例えば、パソコン等の機器による文字入力が可能なことも多いので、ノートに文字を書いたり作文を提出したりする際に、そのような機器の使用を学校に認めてもらいましょう。
併せて、スマートフォンやタブレットで板書を撮影することも認めてもらえれば、授業中にノートを取ることに気を取られず、先生の話を聞くことだけに集中できます。また、受験に関しても、マークシート試験を実施する学校をピックアップすることで対策を取れます。
算数障害がある方(中学生・高校生)の場合は?
算数障害がある子どもは数学の問題を解く前に、まずは日常生活で数に触れる機会を増やし、数の概念に慣れさせることが重要です。具体的には、以下のような対策例が挙げられます。
- 【数の概念に慣れる】
- 日常生活で、買い物の際に商品やお金を数えたり、スポーツの得点を数えたりすることを通して、現実の数がどのように対応しているかを感覚的に理解しやすくなります。
- 【記号の意味を興味のある分野に置き換える】
- 「+(プラス)」や「-(マイナス)」等の記号の意味を理解することが難しい場合は、記号の意味を興味のある分野に置き換えて覚えることがおすすめです。例えば、野球が好きなら、「得点(+)」「失点(-)」等で説明すると理解しやすいかもしれません。
これは算数障害がない子どもにも共通しますが、問題を小さな要素やステップに分けて、順番に取り組む工夫も役立ちます。複雑な問題を単純な形に分けて示してあげることで、最初から諦めずに取り組みやすくなります。
学習障害がある方(中学生・高校生)をサポートする時の注意点
家族はもちろんですが、学校や塾の先生などの周囲の方が、LD(学習障害)の方をサポートする際には、以下の点を心がけましょう。
モチベーションを失わないように達成感を与える
まず重要なのは、子どもが学習に対するモチベーションを失わないようにすることです。モチベーションが下がれば、学習に身が入らなくなり、努力すれば克服できることも不可能になる恐れがあります。そのため、学習過程で小さな成功体験や達成感を積める工夫が欠かせません。
自信がつくようにサポートする
何かに成功した際は、自信を深められるように積極的に褒めましょう。一人で「できた/できない」を繰り返すだけでは、やはりモチベーションを維持することは難しいです。子どもが勉強に対して「嫌だ」「面倒だ」と思わないように、何かを達成できた際はしっかりと褒め、「苦手なことでも克服できる」という自信を与えることが大切です。
できないことに対して叱らない
子どものモチベーションアップには、できないことに対して叱らないことも必要です。精一杯頑張っているにもかかわらず、周囲から責め立てられれば、モチベーションや自信を失ってしまうかもしれません。できないことを責めるのではなく、できることを見つけて褒める姿勢がポイントです。
他の子どもと比較しない
親の心構えとして、LD(学習障害)がある子どもを兄弟姉妹や他の家庭の子どもと比較しないように注意しましょう。LD(学習障害)がある子どもは、特定の分野において苦手や困難があるだけで、他の分野では問題なく能力を発揮できることが多いです。親が「できない子」とレッテルを貼ってしまうと、本人の自信や学習意欲、成長の可能性を妨げてしまいます。
パソコンなども活用した学習方法も検討する
学習方法に関しては、「学習=紙のテキスト」という固定観念にとらわれず、パソコンやスマートフォン等のデジタルの力を活用することも重要です。動画のように視覚的にわかりやすい要素や、音声読み上げ機能のように聴覚に頼る機能を使うことで、学習障害の特徴にも対応しやすくなります。
周囲からの支援を受けられるようにする
家庭内だけでLD(学習障害)の問題を対処するのは難しいため、学校をはじめとした、周囲からの支援を受けることが望ましいです。学校によっては、十分な理解や支援を得られないこともありますが、諦める必要はありません。LD(学習障害)に関する支援や相談は、発達障害者支援センター等の組織でも行えるので積極的に活用しましょう。
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まとめ
LD(学習障害)がある子どもをサポートするためには、本人の障害の種類や特性に合わせた工夫が大切です。例えば、紙のテキストを使った学習方法にとらわれず、パソコンなどのデジタル機器を使うことで困難さが緩和されることがあります。また、LD(学習障害)がある子どもは、苦手な分野に関してはどうしても苦労が多くなってしまうので、学習意欲が落ちないようにメンタル面のケアが欠かせません。必要に応じて、学校やその他の支援機関等のサポートを求めながら対応するようにしましょう。
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