これから働きたい統合失調症の方へ

統合失調症と仕事について

統合失調症の患者さんは全国に77万3千人と推計されています。
(厚生労働省『患者調査』2014)
病院を受診していない方をふくめると、実際には日本全国でもっと多くの患者さんがいると考えられています。

統合失調症を発症した場合、早期に治療を開始し、心理社会的ケアを受けることで多くの方が社会生活に復帰できるといわれています。
まずは医療機関で適切な治療を受けることが大切です。統合失調症はゆっくり回復していく病気です。
再発を防ぐポイントは、焦らず段階を踏んで社会復帰をめざすことです。
「仕事がしたい、仕事に復帰したい」という希望が出てきたら、主治医と相談して始めましょう。

2017年度、ウェルビーから就職した方の約21%が統合失調症を持つ方でした。

どんな準備が必要?

今の力を知り職場での活かし方を考える

統合失調症から回復する過程で、以下のような場面が苦手になることがあります。

これらは仕事をするうえで必要な力でもあります。そのため以前に仕事をしていた方であればいままでのように仕事が進められずもどかしい思いをすることがあるかもしれません。
大切なのはまず、いまの力を客観的に知ることです。
いまの力を知ることで、トレーニングや環境調整の方針を考えることができます。それからゆっくり着実に仕事上の力を取り戻し、新たな仕事の喜びを見つけていきましょう。

症状に支配されず、コントロールする

統合失調症の代表的な症状に幻聴(幻視)や妄想があります。このため物事に集中できなかったり、不快・不安な気持ちになったりして、多くの患者さんがつらい思いをしています。
治療上は、症状を軽減して日常生活を送ることが目標となります。
ただし就職をめざす場合、もう一歩進んだ対処が役立ちます。
自分の力でコントロールできる割合を増やし、症状が悪くなる場面を知って避けることです。
主治医と協力し、就職前の段階的な通所訓練を通じて自分でできる予防の習慣を身に着けていくとよいでしょう。

周囲にサポーターをつくる

病気になったばかりの時期は自分自身も混乱し、周囲の状況を理解するのが精いっぱいかもしれません。
症状が軽減し、できることが増えてきたら再発予防を考えてみましょう。
『働く』を目標にするならば、周囲にサポーターを作ることをお勧めします。通所訓練の期間は、周囲にサポーターを作るための期間でもあります。職場以外でいちばん多くの時間を過ごす家庭に理解者がいると大きな力になります。また、主治医や医療スタッフ、通院先のソーシャルワーカー、地域の就労支援機関のソーシャルワーカー、そして就労移行支援事業所の支援員など、専門職もどんどん活用してください。
自分の希望をしっかり伝えて、味方になってもらいましょう。

休み方・力の抜き方を覚える

統合失調症の患者さんは、自分でも意識しないうちに心や身体の緊張が強くなり、力の抜き方が苦手になる場合があります。
仕事をはじめると新しい仕事や人との関わりが増え、今まで以上に周囲から影響を受けながら暮らすことになります。
再発を防いで長く働くためには、この周囲からの刺激量を自覚することが大切です。
自分にとってよくない刺激が蓄積しないよう、上手に心身のリセットをする方法を覚えましょう。たとえばオフィスや作業場所では一定時間ごとに休憩をとる、ヨガやストレッチを試してみる、毎日帰宅したらリラックスの習慣を持つ、信頼できる友人や安心できるコミュニティを持つ…など、自分にあった手段で力の抜き方を実感できるとよいでしょう。

ポイント

就職活動成功のポイント

① 医療スタッフと相談できる関係をつくり、納得する治療を受け続ける
② 自分のリズム・快不快を見つけ、それにあった職場を選ぶ
③ 周囲にサポーターをつくる

ウェルビーでできること

サポーターづくりを応援します

よりよい働き方を実現するため、主治医、医療機関スタッフ、企業、ウェルビーやほかの支援者、ご家族、そしてあなた自身の役割を明らかにしていきます。
関係者が共通の目標を持ち、ゴールをめざすためのコーディネートを行います。

症状をコントロールする練習をお手伝いします

どんなときに症状が出やすくなるか。どんなことに気をつけると症状が緩和するか。
あなたをよく知る主治医やデイケア、医療スタッフのアドバイスをうけて、通所訓練を通じて実践していきます。

再発しにくい環境づくりを行います

あなたに合った働きやすい職場を探すお手伝いをします。
また就職する企業に対して、あなたが働きやすい環境を調整してもらうよう一緒に申し入れます。
障害を持つ方への企業の“合理的配慮”はどちらかが一方的に行うものではなく、企業と本人が話し合って納得することで、効果があるといわれています。

統合失調症の就職事例

このページはウェルビーを利用して就職した多くの先輩のケースをもとに構成しています。
障害や病気の症状は同じ診断でも一人ひとり異なります。就職活動に向けて自分自身に最適な方法を探していくことが大切です。

ウェルビーでは個別アセスメントをもとに、段階にあったプログラムや支援方法を面談で相談して決定します。

ウェルビーを利用して就職した統合失調症の方の声

前職では障害を職場に説明せずクローズで働いていたのですが、疾患のことを相談することができず困ることがあり退職しました。
「障害をオープンにして障害者雇用で働こう」と就労移行支援事業所をいくつか見学。ウェルビーのスタッフの人当たりの良さと、親切丁寧に案内していただいたことが利用する決め手になりました。
就職はウェルビーが企業開拓した会社を紹介していただきました。私の症状についてあらかじめ伝えていたので、企業の採用担当者も理解と配慮を示していただき、内定をいただきました。障害を開示せずに働いていた時は体調が悪くても無理をして余計に悪化させてしまうこともありました。新しい仕事場では自分の上司やサポートしてくれる先輩がいるので、相談しやすいフォロー体制が整っています。職場定着支援の話や、仕事を続けていくためのキャリアプランも企業側の担当者とウェルビーとで話を進めてもらえたので、就職した後の不安が解消されました。

仕事を辞めてから生活習慣が不規則で昼夜逆転することが当たり前になり、いざ働き始めようと思ってもなかなか採用になりませんでした。
就労移行支援を利用して就職を目指そうと思ったのは、生活リズムを維持するためということが大きかったです。また、就職についての役立つ知識やパソコンスキルを向上することも目的の一つでした。
根を詰めて作業をしてしまうタイプなので、訓練では時間を意識して作業に集中する時と身体と気持ちを落ち着かせる時のメリハリを意識しました。集団で行うグループワークなどを通して他のメンバーと話す機会が増えました。それぞれ異なる経歴や職歴、病歴、障害、将来の目標があり、良い形で刺激を受けました。人と関わることはあまり得意ではなかったのですが、お互いに相談や励ましあえる人間関係をつくることができました。
自分が信頼できる人を見つけ、どんな時でも考えて改善するようにしてください。私は担当スタッフに心をひらけたから、他の方とも打ち解けられました。どんな時でも見守り応援してくださる方がいるのは心強いです。

担当スタッフの方と相談の結果、初めの3カ月は生活リズムを整え、ビジネスの基本スキルや対人能力をあげることを目標にして就労訓練を行いました。
少しずつ人との関わり方に自信を持てるようになり、働くことについても自信が持てるようになりました。
本格的に就職活動をスタートしてからは、履歴書、職務経歴書、私の病状について、添え状などの応募資料を何度もチェックしてもらい、納得できるまで作り直しました。そのお蔭で応募書類が通り、希望していた会社に採用していただけました。
就職活動は長期化するとモチベーションを保つのが難しく不安や焦りが発生してしまいます。そういう時に他の利用者やスタッフと相談でき、サポートしてもらえたことが自分にとっても大きかったです。

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