発達障害がある方の就職|強みを活かせる仕事や
活用できる支援を紹介
発達障害のある方が就職活動をするときに「発達障害だと仕事に就くことが難しいのでは?」「自分に向いている仕事がよくわからない」等の疑問や不安、悩みを抱えることは珍しいことではありません。
そこで本記事では、厚生労働省の調査結果をもとに発達障害のある方の就職事情について解説します。また発達障害の有無にかかわらず、就職活動をするうえで重要なのは自分の長所となる「強み」を知ることです。
発達障害の特徴別の強みとその強みを活かしたおすすめの仕事を紹介します。さらに発達障害のある方やグレーゾーンの方が就職活動時に活用できる支援についても紹介いたしますので、ぜひお役立てください。
発達障害がある方の就職方法は?
発達障害のある方が就職活動をする場合、大きく分けて以下の2つの選択肢があります。
- 一般採用枠での就職
- 障害者採用枠での就職
まずは、それぞれの就職方法について知っておきましょう。
1. 一般採用枠で就職する
一般採用枠とは、応募条件を満たせば健常者・障害者の区別なく、誰でも応募できる採用枠のことです。発達障害のある方が一般採用枠で就職するメリットは、のちほど紹介する障害者採用枠に比べて求人数が多く、給与が高いことが挙げられます。一方のデメリットは、たとえ職場に発達障害があることを公表しても業務形態や業務内容等で十分な配慮を得られないことです。
しかし、改正障害者差別解消法により2024年4月からすべての事業者で障害のある方への「合理的配慮の提供」が義務化されました。合理的配慮とは、事業所の過度な負担にならない範囲で、障害のある方が働きやすい環境を整える配慮のことです。
ここでの「障害者」は一定の条件を満たす障害者手帳を持っていない方も含まれ、人材募集や採用の際に申し出ることで必要な配慮を受けられます。
なお、合理的配慮の義務化は始まったばかりのため、障害への配慮はまだ不十分な可能性があります。それでも一般採用枠で合理的配慮を受けながら働きたい場合には、進路指導の先生等に相談したうえで、事業所にどのような合理的配慮が受けられるかを問い合わせてみましょう。
2. 障害者採用枠で就職する
障害者採用枠とは、事業所が設けている障害者専用の採用枠です。従業員が一定数以上いる事業所では、身体・知的・発達障害を含む精神障害者を雇用することが義務付けられています。
障害者採用枠のメリットは、障害への理解があり、様々な配慮が受けやすいことが挙げられます。例えば、「業務指示を丁寧に受けられる」「できるだけ静かな場所を休憩スペースにしてもらえる」といったように、障害に応じた配慮をしてもらえるので、障害のある方が長期的に安定して働けます。
なお、障害者採用枠で就職するには、障害者手帳(身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳のいずれか)が必要です。そのため、精神障害者保健福祉手帳を持っていないグレーゾーンの方は、障害者採用枠では就職することができません。
発達障害のある方の就職の実態
発達障害のある方が実際どのような働き方をしているかを知ることは、就職活動をするうえで非常に重要です。ここでは厚生労働省が実施した調査をもとに発達障害のある方の就職率や労働時間、平均賃金、勤続年数等について紹介します。
発達障害の方で就職しているのはどれくらい?
厚生労働省は障害者の雇用について5年ごとに調査を実施しています。最新の調査は2023年6月に行われ、2024年3月に調査結果が発表されました。この調査結果によると2023年6月1日現在、従業員規模5人以上の事業所に雇用されている発達障害者は9万1,000人です。2018年に実施した前回調査では3万9,000人だったため、この5年間で約2.3倍に増えています。
さらに雇用形態別でみると2023年6月1日現在、正社員で働いている発達障害の方の割合は36.6%です。2018年の前回調査では22.7%だったため、正社員で働いている発達障害のある方が増えていることがわかります。
ASD(自閉スペクトラム症)や
ADHD(注意欠如・多動性障害)等、
特性別でみた場合の割合は?
事業所が発達障害者であることを確認する方法には、「精神障害者保健福祉手帳での確認」と「精神科医の診断」の2つがあります。
先ほどの調査によると、精神障害者保健福祉手帳での確認は81.7%(前回調査68.9%)で、精神科医の診断により確認している割合は1.0%(前回調査4.1%)と、精神障害者保健福祉手帳での確認が多いことがわかります。さらに精神障害者保健福祉手帳の等級をみると、最も多いのは「3級」の41.1%で、「2級」の23.6%が次に続きます。
そして発達障害の特徴別でみると、最も多いのは「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害(※)」の69.1%でした。特徴別の詳細は以下のとおりです。
※政府資料での表記をそのまま使用
【特徴別の割合】
- ASD(自閉スペクトラム症)=69.1% (政府資料での表記は「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害」)
- LD(学習障害)=2.4% (政府資料での表記は「学習障害」)
- ADHD(注意欠如・多動性障害)=15.2% (政府資料での表記は「注意欠陥多動性障害」)
- その他、言語の障害、協調運動の障害=4.0%
1週間あたりの労働時間
同調査では労働時間についても調べています。発達障害のある方の労働時間の割合は、次のとおりです。
【1週間あたりの労働時間】
- 通常(週30時間以上)=60.7%
- 週20時間以上30時間未満=30.0%
- 週10時間以上20時間未満=4.8%
- 週10時間未満=3.9%
発達障害のある方の約9割が週20時間以上働いていることがわかります。
1ヵ月あたりの平均賃金
同調査によると2023年5月時点の発達障害のある方の平均賃金は13万円です。これをみると一般的な平均賃金に比べて低いと感じる方は多いのではないでしょうか。
しかし、この平均賃金は発達障害のある方全体の平均賃金であり、週30時間未満で働いている方も含まれるため、平均賃金はどうしても低くなってしまいます。
何年くらい同じ企業に勤めているか
同調査によると発達障害のある方の平均勤続年数は5年1ヵ月です。2018年の調査では3年2ヵ月のため、この5年で2年ほど平均勤続年数が延びていることがわかります。
出典:プレスリリース|厚生労働省|プレスリリース「令和5年度障害者雇用実態調査の結果を公表します」
発達障害の強みを活かせるおすすめの就職先・仕事
発達障害のある方が就職活動をするうえで重要なのは、自分の発達障害の特徴や強みを知り、その強みに合った仕事を見つけることです。そこで、ここでは発達障害の特性別に向いている仕事を紹介します。ただし、同じ障害でも程度や現れ方には個人差があるので、紹介する内容が必ずしも当てはまるわけではありません。
あくまでも進路や仕事を決める際の参考にしてみてください。
ASD(自閉スペクトラム症)の強みと向いている就職先・仕事例
ASD(自閉スペクトラム症)の方の主な強みは以下のとおりです。
【ASD(自閉スペクトラム症)の主な強み】
- 興味のある分野への集中力が高い
- 物事に妥協せず、根気強い
- 正確に物事を行うのが得意できちょうめん
- ルールに沿って行動するのが得意
- 論理的思考力が高い
ASD(自閉スペクトラム症)の方は仕事のルールがはっきり決まっており、淡々と業務を進められるような就職先が向いています。例えば、次のような仕事がおすすめです。
【向いている仕事・職場の一例】
- データ入力・校正等正確さが求められる仕事
- 設備点検・工場でのライン作業等仕事の手順や方法が決まっている仕事
- ITエンジニアやプログラマー等論理的思考力が必要な技術職
LD(学習障害)の強みと向いている就職先・仕事
LD(学習障害)の方は「読む」「書く」「計算する」等、特定の学習が苦手な方が多いです。したがって、電卓やITツールを使える環境で、苦手な作業がない・少ない就職先なら働きやすいでしょう。また、LD(学習障害)の方は自分の得意・不得意を知っておくことも重要です。「得意なこと」「自信があること」は自分の長所となり、それを活かしつつ、不得意なことに対してサポートや工夫を講じることで、仕事がしやすくなります。
例えば、LD(学習障害)の方には以下のような仕事が向いています。
【向いている仕事・職場の一例】
- 苦手分野を補助できるようなツールが使える職場
- ノルマのない職場
ADHD(注意欠如・多動性障害)の強みと向いている就職先・仕事
ADHD(注意欠如・多動性障害)の方の主な強みは以下のとおりです。
【ADHD(注意欠如・多動性障害)の強み】
- 様々な分野への好奇心がある
- アイデアが次々と浮かびやすい
- 興味のあることへの集中力が高い
- 行動力がある
- 決断が早い
- コミュニケーションが比較的得意
ADHD(注意欠如・多動性障害)の方は、上記の強みを長所として活かせる次のような仕事がおすすめです。
【向いている仕事・職場の一例】
- デザイナー等のクリエイティブな仕事
- 営業職、販売職等コミュニケーション能力が求められる仕事
(ただし、対人関係が苦手な場合は、トレーニングやサポートがある職場が望ましい) - プログラマー、エンジニア等集中力を要する技術職
発達障害のある方が就職時に活用できる支援には何がある?
発達障害のある方が利用できる支援には様々なものがあります。そこでここではその中でも就職時に活用できる支援を紹介します。
障害者職業能力開発校で職業訓練を受けられる
障害者職業能力開発校とは、障害のある方が職業に必要な知識や技術を学び、就職に向けて準備する場所です。また、仕事に就いてからの悩みごとや困りごとにも相談にのってくれます。
ただし、障害者職業能力開発校は全19校 (2024年6月現在)とすべての都道府県にあるわけではありません。お住まいの地域に障害者職業能力開発校がない場合には通学もしくは寮に入って通うことになります。障害者職業能力開発校の詳しい内容や申し込みは、各障害者職業能力開発校またはハローワーク(公共職業安定所)に問い合わせください。
さらに障害者職業能力開発校は、施設によって違いはあるものの幅広い年齢の方が職業訓練を受けられます。例えば、東京都の障害者職業能力開発校では、中学校、高等学校、特別支援学校に在学中の方も応募が可能です。ただし、学生の方が障害者職業能力開発校の入学を希望する場合には、進路指導の先生と相談のうえ、学校からの申し込み手続きが必要になります。
障害者職業能力開発校や IT技能を習得できる施設が全国一覧で掲載されています。
入学のための詳細や受講科目などにつきましては、各施設まで直接お問い合わせください。
就労移行支援を活用して自分に合った就職を目指せる
就労移行支援とは、障害者総合支援法で定められている障害福祉サービスのことです。就職して労働契約を結んで働く一般就労を希望する障害者の方に、就職に必要な知識やスキルを提供してくれます。また、働き始めてからのサポートもしており、原則2年間様々な支援が受けられます。
就労移行支援を受けるには「障害福祉サービス受給者証」が必要で、障害福祉サービス受給者証の申請は基本的に市区町村の福祉課が行っています。
利用対象者は原則18~64歳ですが、大学生や短大生、専門学校生も利用可能です。加えて15〜17歳の方も児童相談所長の意見書があれば利用できます。
また精神障害者保健福祉手帳を持っていない方でも、「自立支援医療受給者証」や「医師の診断書」を提出すればサービスを受けられます。そのため、発達障害のグレーゾーンに該当する方も、条件によっては就労移行支援を利用できます。
ただし、事業所によっては学生や18歳未満、グレーゾーンの方を対象外としている場合がありますので、まずはお住まいの市区町村の福祉課に問い合わせて確認しましょう。
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- 大学生でも就労移行支援は利用できる!
就労移行支援は、就職に向けて必要なスキルを身に付けるためのサポートを提供する制度です。大学生が就労移行支援を利用する際の条件や注意点について詳しく解説します。
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- 発達障害やグレーゾーンの学生による
発達障害や病気の症状・特性に向き合い、どうやって就職活動を行い、実際に成功させたかの事例を紹介します。
就職活動中の学生
(高校3年、大学4年生)のみなさんへ
私たちウェルビーはうつ病や発達障害等の人のための就労移行事業所です。
あなたの個性や長所を最大限に伸ばすサポートをします。
色々悩んだり不安になることはあるけど正直に全部、あなたの想いを打ち明けて
最も後悔しない未来のキャリアプランをウェルビーと一緒に考えてみませんか。
就活のご相談やセンター体験が可能です
まとめ
発達障害のある方が就職活動する際には、自分の強みを活かした仕事を選ぶことが重要です。また、就職活動で迷ったり心配ごとがあったりする場合には、一人で悩まずに近くの人や地域の支援機関に相談してみましょう。
また発達障害に関する情報サイトを参考にしたり、就労移行支援等のサポートを受けたりすることをおすすめします。