発達障害がある方の進路について|進学・就職などの選択肢、
相談先をご紹介
中学や高校、大学に通う方は、数年ごとに進路選択という大きなイベントがあります。その中で、発達障害のある方が進学や就職等の進路を選ぶ際、適切な選択肢を見つけることは非常に重要です。特に、ご自身の特徴や強み・弱みを理解し、それに合った進路を選ぶことは、ストレスを軽減し、安定した生活を保つために欠かせません。
本記事では、発達障害がある方に向けて、中学・高校・大学の各ステージにおける進学や就職に関する選択肢を症状別に紹介するとともに、困ったときの相談先となる各種機関についても解説します。
発達障害のある方が進路を決める時にしておくと良いことは?
発達障害のある方が進学や就職等の進路を選ぶ際、その進路が自分に合っている環境か不安に感じることがあるかもしれません。しかし、ご自身の特徴や進路ひとつひとつの特徴を知っておけば、より良い環境を見つけるヒントになる可能性があります。ここでは、進路を考える前にしておくと良いことを紹介します。
発達障害の特徴を把握する
発達障害は、セルフチェックや病院の診断で、ご自身の特徴をしっかりと把握することが重要です。もし発達障害がある場合は、その種類を知ることができ、同時に得意分野や苦手分野を明確に把握できるため、自己理解が深まります。
さらに、普段の生活の中で何ができるか、何が苦手か、何が好きで何が嫌いかを知っておくことも大切です。特に発達障害がある場合は、自分に合った環境で働いたり学習したりすることが、精神的な健康の維持にも役立ちます。
例えば、ASD(自閉スペクトラム症)の特徴がある場合は、細かい作業や一貫性のある業務に向いていることが多く、ADHD (注意欠如・多動性障害)の場合は変化のある作業や動きのある職場が適していることが多いと考えられています。こうした特徴を理解し、仕事や学業でパフォーマンスを最大限に発揮できるような進路を選ぶことが大切です。
進学先・就職先などの進路の特徴を理解する
進学や就職等の進路を選ぶ際には、ご自身のステージ(中学生・高校生・大学生)に応じて、その特徴をしっかりと理解しておきましょう。選ぶ進路によって、その特徴や適性が異なるため、ご自身に合った選択をするための準備が必要です。
中学生で高校への進学を考える際には、全日制や通信制等の高校の特徴を把握しておくと良いでしょう。全日制高校は、友人とのコミュニケーションに困難を感じない場合に向いています。一方で、周囲とのコミュニケーションに難しさを感じている場合には、通信制高校のほうが適している可能性があります。
また高校生にも様々な進路の選択肢があります。進学先の学校や就職先がご自身の興味や得意分野に合っているかどうかを確認しましょう。
大学生の場合は、就職等の進路を選ぶ場面が多くなり、就職活動を通じて企業に就職するか、就労移行支援を活用して職業訓練を受けるか等、複数の選択肢があります。就職活動では、ご自身の強みや興味を活かせる企業や職種を探すことが大切です。
在籍中の学校に相談する
学校の先生やカウンセラーに相談することで、ご自身では把握しづらい学習態度や集中力、興味の分野を考慮したアドバイスが受けられます。学校の先生は、日々の授業を通じて生徒の学習態度や得意分野を把握しているため、具体的なアドバイスがもらえるでしょう。特に発達障害がある場合、ご自身の強みや弱点を理解するために専門的な意見が役立ちます。
また、学年や在籍している学校によって対応は異なりますが、スクールカウンセラーに相談すると、学生の心理的なサポートはもちろん、進路の選択によっては学校と連携している外部の支援機関を紹介してもらえることもあります。
発達障害の専門家に相談する
発達障害に対して理解のある専門家に相談することも、選択肢のひとつです。専門機関では、生徒本人だけでなく保護者からの相談も受け付けており、家族全体で適切なサポートを受けられます。専門家からのアドバイスは、進路選択や日常生活における困難を軽減するための具体的な対策を提供してくれるため、とても心強い存在です。
例えば、発達障害者支援センターでは、発達障害に関する総合的な支援を行っています。個々の特徴に応じた支援プランを作成し、就学や就職に関するアドバイスも可能です。また、教育センターや特別支援教育センター等も利用できます。
このような専門機関を活用することで、発達障害に対する理解を深め、適切な支援を受けられます。進路選択や日常生活において困難を感じる際には、専門家の力を借りることもおすすめです。
【中学生の場合】発達障害がある方の卒業後の進路
中学卒業後の進路を考えている場合、大きく分けて進学か就職かを選ぶことになります。また、その中にも選択肢があり、悩まないためにもそれぞれの特徴を知っておくことが大切です。ここからは、中学卒業後に選択できる進路について詳しく解説します。
高校などに進学する
ひとつ目の選択肢として、進学を選ぶことが考えられます。高校等の高等教育には様々な形式があり、全日制のように毎日登校する必要がない場合もあります。例えば、通信制や定時制の高校もあり、それぞれの特徴やニーズに合わせて選ぶことが可能です。
また、特別支援学校についても検討できますが、発達障害のみの特徴では入学が難しいとされる場合があり、発達障害と知的障害を併存している等、複数の困難を抱えている場合に通えることが多いです。
以下は、各進路先とその特徴です。
- 全日制高校
- 一般的に平日の5日間通学し、朝から夕方まで授業を受けます。学校生活を通じて友人と交流し、クラブ活動等の課外活動にも参加できます。全日制は規則的な生活リズムを保つことができ、集団生活でのコミュニケーション力を養う機会が豊富です。
- 通信制高校
- 毎日通学する必要がなく、自宅学習が主となります。課題の提出が進級の要件となっており、自分のペースで学習を進められます。時間の融通が利きやすいため、仕事や趣味との両立が可能です。
- 定時制高校
- 夜間に授業を行う場合もあり、全日制よりも授業時間が短いのが特徴です。働きながら学ぶ生徒や、昼間に他の活動をしている生徒に適しています。学びのリズムを自分に合わせやすい環境が整っています。
- 高専(高等専門学校)
- 一般的に5年制で、工業系や商船系の学科が設置されています。専門知識を身に付けることができ、卒業後には即戦力としてのスキルを持つことが期待されます。実践的な教育が充実しており、職業に直結する技術を習得できます。
- 特別支援学校の高等部
- 障害や病気を抱えた生徒のための学校で、高卒資格は得られないものの、大学の受験資格が手に入るため、将来的な進学を目指すことが可能です。
- 高卒認定試験
- 進学という形ではないものの、合格すれば高校卒業と同程度の学力が認められます。自分のペースで学習を進められるため、自主性や計画性が重要となります。
- フリースクール
- 個人やNPO団体が運営する民間の教育機関で、生徒一人ひとりに合わせた多様な教育が受けられます。通常の学校とは異なる柔軟な学び方が可能で、生徒の個性や興味に応じたプログラムが用意されています。
進学せずに就職する
進学をせずに、就職するという選択肢も考えられます。いわゆる「中卒」での就職は決して悪い選択ではありませんが、高校や大学を卒業する場合よりも、就職先の選択肢が限られる実態があります。そのため、中学を卒業してすぐに就職するのではなく、職業訓練を受けるという方法も有効です。
全国の自治体が運営する障害者職業能力開発校では、職業訓練を受けられます。東京都の障害者職業能力開発校では年齢制限等が設けられていないため、中学生も進路指導の先生と相談のうえで申し込むことが可能です。訓練を通じて実践的なスキルを身に付ければ、将来的な就職に向けての準備ができます。
【高校生の場合】発達障害がある方の卒業後の進路
高校等を卒業したあとの進路は、中学卒業時と同じように進学と就職から選択できます。ただし、どちらも選択の幅が広がっており、より慎重な検討が大切です。ここからは、大学や専門学校の種類、就職における選択肢を解説します。
大学・専門学校などに進学する
高校卒業後は、大学や短大、専門学校に進学するという選択肢があります。学校によってはキャンパスに通学せず、オンラインや自宅学習ができる環境が整っているところもあります。以下、各進路の特徴を解説します。
- 4年制大学
- 幅広い分野で深く学習でき、専門知識を身に付ける機会が豊富です。また、大学生活を通じて様々な経験を積む中で、多くの人間関係を築けるのも魅力です。卒業後の選択肢も広がりやすく、進路の幅が広いことが特徴です。
- 短期大学(2年制)
- 実践的なスキルを短期間で習得できるため、早期に就職を目指す人に向いています。カリキュラムが実践的であり、即戦力としてのスキルを磨ける点が魅力です。
- 通信制大学
- 通学の負担が少なく、自宅での学習がメインとなります。自分のペースで学習を進められるため、時間の融通が利きやすく、働きながら学びたい人にもおすすめです。インターネットを通じた授業や教材の提供により、効率的に学習を進められます。
- 専門学校
- 特定の職業に直結するスキルを集中的に学べる場です。実践的な訓練が多く、卒業後には即戦力としての知識と技術を持って就職することが期待されます。医療、福祉、デザイン等、多様な分野で専門知識を深められます。
進学せずに企業へと就職する
高校卒業後の進路として、進学を選ばずに企業へ就職する場合、「一般就労」や「福祉的就労」といった選択肢が考えられます。
一般就労は「一般雇用」と「障害者雇用」に分かれます。一般雇用は、通常の企業における就職であり、障害の有無にかかわらず他の社員と同様に働きます。一方、障害者雇用は、障害のある人々のために設けられた特別な枠組みであり、企業は障害者が働きやすい環境を整える義務があります。
また、福祉的就労は、福祉サービス事業所内でサポートを受けながら働く形態です。就労継続支援A型やB型といった事業所では、障害のある人々がサポートを受けながら働けます。これにより、働くことに対する不安を軽減し、安定した環境で仕事ができます。
さらに、就労移行支援を活用するという選択肢もあります。これは働くための準備を行い、その後就職するための支援を受けるプログラムです。就労移行支援事業所では、職業訓練や就職活動のサポートを提供しており、働くためのスキルや知識を身に付けられます。
進学せずに就職を考えている場合は、ご自身に合った就労形態を選ぶことが重要です。ご自身の特徴やニーズに合った就職方法を見つけることで、自分らしいキャリアを築くことが可能となります。
【大学生の場合】発達障害がある方の卒業後の進路
大学生の場合は、障害の有無に関係なく就職活動をしたり、卒業後の進路について考えたりする必要があります。就職する場合は一般雇用と障害者雇用からどちらかを選択でき、いきなり就職が難しい場合でも、就労移行支援サービスの利用も可能です。ここからは就職の形式や、障害の特徴ごとに合っている職業を紹介します。
就職活動を行い企業に就職する
大学生の就職活動は、一般的に大学3年生や4年生の段階で行われます。企業に直接雇用される一般就労を目指す場合、ご自身の特徴に応じて一般雇用か障害者雇用かの選択が可能です。
また、仕事内容は障害の特徴によって合う・合わないがあるため、事前に調べましょう。以下は、発達障害の特徴ごとに合っている職業の一例です。 必ずしもすべての方に当てはまるものではありませんが、参考にしてみてください。
- ASD(自閉スペクトラム症):研究職や校正・校閲等
- LD(学習障害):清掃や工場勤務等
- ADHD(注意欠如・多動性障害):営業職やWebデザイナー等
ASD(自閉スペクトラム症)の方が向いている仕事
ASD(自閉スペクトラム症)は、対人関係やコミュニケーションの困難さを特徴とする発達障害です。その反面、高い集中力や論理的思考能力といった強みがあります。ご自身の特徴を知り、それらを活かせる仕事を選びましょう。
例えば、研究職はASD(自閉スペクトラム症)の方に向いている仕事のひとつです。研究職では、特定の分野に深く没頭し、継続的に調査や実験を行うことが求められます。
また、校閲や校正の仕事もASD(自閉スペクトラム症)の方に適しています。これらの職種では、文章の誤りや不備を見つけ出し、正確に修正することが求められます。細部に注意を払うことが得意なASD(自閉スペクトラム症)の方は、ミスを見逃さずに修正できます。
LD(学習障害)の方が向いている仕事
LD(学習障害)は、読み書きや算数といった特定の分野で学習が苦手な特徴のある障害です。このような方が仕事を選ぶ際には、得意・不得意の見極めが非常に重要です。
LD(学習障害)の方は、計算機等のツールを使用したり、周囲の協力を得たりすることで困難を解決できる傾向があります。そのため、個々の仕事内容よりも、就職先の環境がご自身の特徴と合っているかがポイントとなります。
LD(学習障害)の方が向いている仕事としては、ご自身の得意分野を活かせる職業が考えられます。例えば、クリエイティブな作業や体を動かす仕事等、学習に直接関係しない分野では能力を発揮しやすいかもしれません。
また、チームでの仕事やサポート体制が整っている職場も向いています。仕事内容も大切ですが、周囲の理解と協力を得やすい環境で働くことで、安心して業務に取り組めます。
ADHD(注意欠如・多動性障害)の方が向いている仕事
ADHD(注意欠如・多動性障害)は、集中力の維持や衝動性のコントロールが難しい一方で、発想力や創造力に優れている特徴を持つことが多いと考えられています。ご自身の強みを活かせる仕事を選ぶことが重要です。
向いている仕事としては、デザイン分野やプログラミングが挙げられます。デザインの仕事では、常に新しいアイデアや視点が求められます。ADHD(注意欠如・多動性障害)の方は、多くのアイデアを瞬時に思いつけることから、その発想力と創造力を発揮する場として適しています。
プログラミングでは、論理的思考と創造的な問題解決能力が求められます。複雑なコードを書く際に必要な集中力を発揮できるだけでなく、新しいアルゴリズムやプログラムを考案する創造力も役立ちます。
また、どちらの分野も個人作業が多く、自分のペースで仕事を進められるため、集中力の波がある場合でも対応しやすい点もメリットです。
フリーランスとして活躍する
大学で専門性の高い分野を学び、そこで培った知識や経験を活かしてフリーランスとして活躍する、という選択肢もあります。エンジニアやデザイナー、Webサイト制作等、パソコンを活用して在宅で自由に働けることがメリットです。
ただし、フリーランスで活動するためには、取引先と頻繁に連絡を取り合う他、体調やスケジュールをはじめとした様々な自己管理が必要になります。一人で管理するのが難しい場合は周囲のサポートを受けられるか、実際の働き方をシミュレーションしておきましょう。
就労移行支援を活用して働く準備をする
就労移行支援サービスは、大学在学中でも利用可能です。ただし、卒業見込みがあることや、住んでいる市区町村の判断等いくつかの利用条件があるため、ご自身が対象になるかを確認する必要があります。
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- 大学生でも就労移行支援は利用できる!
就労移行支援は、就職に向けて必要なスキルを身に付けるためのサポートを提供する制度です。大学生が就労移行支援を利用する際の条件や注意点について詳しく解説します。
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- 発達障害やグレーゾーンの学生による
発達障害や病気の症状・特性に向き合い、どうやって就職活動を行い、実際に成功させたかの事例を紹介します。
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- 発達障害がある方の
発達障害のある方の就職方法や実態について解説いたします。また発達障害のある方に向いている仕事などについても紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
まとめ
学校卒業後の進路は、中学・高校・大学の各ステージによっても、進学か就職かの選択によっても異なります。まずはやりたいこと・できることを明確にし、その次にご自身の希望と個性に合う進路を選ぶことが大切です。
また家族や先生など、身近な人と相談して決めてもよいでしょう。
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